スマートグラスを用いたAR+AIによるリモート農業体験型イベント


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2020/11/24

凸版印刷社(東証1部,7911)の取り組むシステム開発事業の一環で、参加者が自宅にいながらでもリモートでりんご狩りを体験ができるバーチャルりんご狩りというイベントが話題になっていましたので、その内容の方をアーカイブしておきます。


リモート農業体験型イベント

以前、スマートグラスを用いて農作業者のアシストを行うAIを導入した先行研究の話題を取り上げていましたが、昨今の通信技術の進化による相互通信速度の向上を利用して、ARを利用した体感型農業体験イベントということも可能となっているようです。

合同会社タコスキングダム|緑のタコの田園地帯
[スマート農業 x 話題] ぶどうの摘粒作業を効率化する粒数の自動判定AI技術を開発

山梨大学と民間企業の共同でブドウの摘粒時の粒数を測定する人工知能(AI)技術を開発したとのプレスリリースが公表結果をアーカイブします。

今回のバーチャルりんご狩りの参加者は、モニター越しに臨場感のあるリアルタイムの映像を確認しながら、農作業者とのコミュニケーションを図ながらりんご狩りを"体験"するという新感覚の試みになっています。

もともとは新規就農者の育成などを目指して開発したシステムを応用したもので、例えば複数の農業実習生への実技講習に活用できたり、逆に一人一人の研修生の作業状況を講師側から確認し、離れた位置からでも的確に指示できるため、高齢で農地にいけなくなったベテランの農家の方でも在宅しながら実地指導できるため、技術の継承にも活用できるようです。

凸版印刷社では、長野県飯綱町に同社の位置付ける次世代DX開発拠点・通称
ICT KŌBŌを2020年の4月に開設して、システム開発事業と地域活性化に取り組んでいます。

今回は
ICT KŌBŌの事業活動として、飯綱町の特産であるりんごを育てる地元果樹園農家と協力し、スマートグラスを活用した「バーチャルりんご狩り」を大阪市内のイベント会場と繋いで、参加者にバーチャルりんご狩りを楽しんでもらうイベントを開催したようです。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

出典: バーチャルリンゴ狩りの概要図,
https://www.toppan.co.jp/news/2020/10/newsrelease_201026_1.htmlより抜粋

果樹園内で作業する農作業員にスマートグラスを装着してもらい、その映像をイベント会場の遠隔地のタブレット端末へとリアルタイム転送させ、臨場感のある映像を配信しています。イベント会場内の参加者が、タブレット画面に映し出された画像から、音声による指示とタッチポインタなどの操作によって、農作業者に指示し、リモートながらより臨場感のあるりんご狩りを体験できるようになっています。なお、イベント参加者がリモートで狩ったリンゴは、後日郵送にてご自宅に届けられるとのこと。

新型コロナウイルスの影響で農村観光にもICTを活用する動きが広がる中で、このようなリアルとバーチャルを融合した新たなりんご狩り体験を呼び水として、長野県飯綱町の地域活性化も支援しているそうです。


ICT KŌBŌ

凸版印刷社の掲げる大きな事業目標は、生産・ものづくり > 卸売・小売 > 生活者に到るまでのデジタル化の力でサプライチェーン全体の変革を支援するT-DX(トッパン・デジタルトランスフォーメーション)の推進にあるようです。

この同社独自の
T-DXにおける事業の柱となるシステム開発部門の体制強化を目的として長野県飯綱町に次世代DX開発拠点の第一号としてICT KŌBŌが開設されました。この拠点を中心に、地方にUターンして地元で働こうとするデジタル人材の確保・育成や、新しい雇用を創生する支援を行いながら地域を活性化するのも目標の一つのようです。

昨今の新型コロナショックにより、都市部からより感染症にかかるリスクの低い農村などに移住しより安心で快適な利便性の高いオフィス環境を求めている企業やビジネスパーソン向けに、リモートワークなどの設備も整えてみたりと、地域交流を通じて新しいビジネスの創出にも貢献していくようです。

長野県飯綱町に限らず、産業の中心が農業となっている地方の自治体では、自然や農業体験に訪れる観光客の減少が深刻化しており、今回の凸版印刷社の試みはデジタル技術を活用して、何とか観光客を取り戻せるようにリモート体験型のイベントを通して、同町の特産であるりんごの魅力を発信していこうという意図があったようです。


AIによる摘果最適化の判別技術

今回の試みでは、凸版印刷社の様々な研究の応用技術が使わているようですが、学習されたAI(人工知能)により収穫の頃合いのりんごを解析させて、遠隔地で監視している人間の観ているモニターに表示してくれるりんご判定モードという機能が実装されています。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

出典: イベント会場で遠隔でのりんご狩り体験を行っている様子,
https://www.agrinews.co.jp/p52427.htmlより抜粋

今回のAIでは、りんごの果実の赤さから成熟度を判定して、摘果に適したものをモニター越しに見分けやすくしてくれるアシスト機能であり、イベントの参加者は全く経験がなくとも、甘いリンゴを選んだり、そのりんごがどのような特徴をもつ品種なのかを果樹栽培のエキスパートと相談しながら、りんご狩りを楽しむことが可能になっているとのことです。

究極的には、人の手を狩りない完全な自立型ロボットとAIによる農作物の収穫技術が今後のスマート農業の大きなビジネスターゲットになっていることは以前の
特集記事で書いた通りです。

合同会社タコスキングダム|緑のタコの田園地帯
[AI x スマート農業] 人工知能(AI)と農業の融合分野の最近の動向まとめ

AIの技術によって生まれている新しい農業への応用例をアーカイブします。

ただし、農業体験イベントというのはどれだけARやAIの技術が発展しようとも、若い世代へ食物がどのように生産されているかを教えたり、自然への感謝を忘れないようにしてもらう上で有効な教育・観光資源として残っていくかも知れません。


参考サイト

飯綱町の次世代DX開発拠点が「バーチャルりんご狩り」を実施 | 凸版印刷

食べ頃AI判別 オンライン収穫 農家視点も味わう 技術継承用のシステム活用 凸版印刷

記事を書いた人

記事の担当:taconocat

ナンデモ系エンジニア

個人レベルで可能なハイテクx農業を日々模索しています。 時折スマート農業界隈の気になったニュースなどもゆるく情報発信する感じです。