[AI x スマート農業] 人工知能(AI)と農業の融合分野の最近の動向まとめ


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2020/10/20

このブログでもちょいちょい話題を取り上げていますが、次世代型のスマート農業で中核の技術になるのが人工知能(AI)です。今回はそんなAIの技術によって生まれている新しい農業への応用例が海外のフォーラムサイトでまとめれられていたので、ここで改めてアーカイブしておきます。


AI技術で実現する新しい農業

AIまたは機械学習によって今まで出来なかったような無人化・オートメーション化が農業の世界でも実現可能な域にまで来ています。

近年の無線通信技術、ビッグデータ技術や高速演算処理可能なエッジコンピューティング技術の発達と相まって、農業の行われている現場にいながらにしてざまざまな生産物のデータを採取し、評価や作業に活かせるようになってきています。

いまやAIを使えば育成や収穫までの全てのサイクルにおいて活用の場があり、種まき、土壌の温度・栄養・水分の管理、収穫時期の判断、自律ロボットの操作による収穫などなど、現在も世界中でいろいろな研究・開発が続いているようです。そんなAI技術を用いた応用分野の最近の動向を以降でまとめてみましょう。


作物品種への応用

品種改良

植物への品種改良への応用は理論的に行われていても、結局収穫後でしか生産物の特性を知ることができなかったり、たまたま起こった育成条件が影響していたりするようで、その結果はあまり予想がつきにくいと言われています。

従来の改良に用いられる品種の選別はとても巧妙な工程あり、水や養分の利用や気候への適合性や、病気への耐性、収穫物の栄養分や味などの因子を特定の遺伝子を探していくようです。

近年のデープラーニングによるAI技術を用いることで、数十年にもおよぶ農場で得られたデータを解析にかけることで、様々な気象状態下の穀物の生育状況と、これまで見落とされていた新しい育成条件を見出すことがこのうとなり、これらの作成した確率モデルからのデータに基づき、AIがどの遺伝子が植物の好ましい特性に寄与しているかを予想できるようになっていくようです。

品種の識別

従来の人の眼ではベテランの域に達していないとなかなか区別がつかない品種の識別でもAIが活用できるようです。

人間の目視に依る観察では、主に植物の発色や葉の形から情報を基に判別するのが限界でしたが、AIでは葉脈の形態・形状など葉っぱの詳細な情報のデータベースと照合することにより、もっと正確・迅速に品種の区別を行わせることが可能となってきているようです。


農場の管理への応用

土壌管理

農業に従事する専門家にとって、土壌の状態は複雑かつ曖昧なもので、時として不均一なあり、土壌から有用な情報を読み解くのは至難の業です。例えば土壌の温度だけに着目してみても、地域ごとの収穫量に影響を及ぼすような気象の変動を知ることができるように、土壌の状態を正確に把握することが重要になってきます。

機械学習によるアルゴリズムは、蒸発の過程・土壌に含まれる水分や土壌の温度のデータをより正確に解析できるため、土壌の与える生態系のダイナミクスと農業への影響を考えるのに役立ちます。

水の管理

農業にとって水の管理とは、土壌の水捌けの量、やその日の気候状態による蒸発量、主に農作物から蒸散によって大気に戻っていく蒸発散量のバランスを管理することです。

これまでのところ、最近開発された機械学習を用いた応用としては、日ベース・週ベース・月ベースごとの蒸発量や露点温度の推定を行い、より効率的な灌漑設備の運用を可能にできます。気象現象をより精度良く予想できれば、蒸発散の量と蒸発量を推定できます。


穀物生産管理への応用

生産量の管理

収穫高の予測は、計画的な農業を行う上で最も重要かつ人気のあるテーマの一つのようです。

AIを利用することで、生産量を視覚的にマッピングし推定値を算出し、農作物の供給と需要との比較から農作物の管理を行うことができるようになります。

最先端の手法では、過去のデータに基づいた単純な予測をはるかに超えており、農作物・気候・市場の動向などを包括的に多次元分析を行い、活きたデータを視覚化技術によって提供することで、農業経営者や消費者双方に利を最大化することを可能にしています。

収穫の管理

農作物の品質を正確にモニタリングしその状態を分類することで、出荷時の価値を増やし、また廃棄される量を減らすことが可能になります。

長年農作物を育ててきたベテランの農家と言えど見落としてしまうほどの無意味に見えるデータからでも、AIによる解析から農作物の全体的な品質に影響を与える新しい因子を明らかにさせ、それを最大限に収穫に活かせるようになるそうです。

病気の検知

露天栽培やハウス栽培の両方で、害虫や病気の防除を行う際に、最も広く使用されているのは、農薬を均一に散布する方法が採られています。この方法では、一定の効果を得るためにかなりの量の農薬を必要とします。その結果、膨大な農薬の購入のコストと、圃場やその周辺への環境的な負荷が生じてしまいます。

AI技術を用いればもっときめ細かい作業を行わせることができるため、農薬の投入量を最適化させ、噴霧時間の短縮・ピンポイントでの噴射・病気を持った植物個体の絞り込みなどが可能になります。

雑草の検知

病気は別にすると、雑草は農作物の生産において最も厄介な物です。雑草の駆除で最も困難なことが、植え付けた作物と区別しながら雑草だけを検知して駆除させることが機械的にとても難しいという点です。

画像認識技術とAIによる雑草駆除を行えば、理論上は環境への副作用なしに、低コストで雑草の検出+農作物との識別を高精度で行うことができます。将来的にこれらの技術を搭載したロボットを農場に動き回らせて、雑草を駆除させることで除草剤の量を最小限に抑えることを目指した研究開発も進んでいます。


畜産物への応用

家畜の生産

これは農作物管理と同様に、機械学習されたAIから農業パラメータの正確な推定を提供することで、牛や卵の生産などの家畜生産システムの経済効率を最適化します。たとえば、家畜の体重予測システムは、屠殺日の150日前に将来の体重を推定できるようになるので、畜産農家はその日与える食事などの条件を的確に変更できるようになります。

家畜の保護

現代の畜産では、家畜は食糧としてだけでなく、不幸を感じることもあれば農場環境でストレスを受けて疲れてしまう動物として扱われるようになっています。動物の行動を細かく分類していくことで、例えば咀嚼の様子から体調の変化を読み取り、与える餌をどう調合すると良いのかを予測できるようになります。また、立ち上がり方、移動の仕方、餌の食べ方、水の飲み方、あらゆる動きのパターンを解析していくことによって、家畜がさらされているストレスの量を判断しながら、病気の疑いや体重の増加量、生産量を予想できるようになります。

農家のちょっとした手助けに

農業の実務以外の付加的な業務にもAIによる応用できます。

たとえば、とある農業経営者が夜中までねばって、農作物の管理で次はどうしようこうしようと頭を悩ませならが計画を立てているとします。この経営者は今、地元の卸売り業者にもっと収穫したものを売るべきか、それとも地域の見本市に出荷すべきか悩んでいて、最終的にどこに売りに出すかを決定する際の相談役を欲しています。

最近ではこのような農業経営者を支援する目的で、卸先などの価値の高い情報と分析ツールを提供できる専門チャットボットの開発がスタートアップ企業を中心に進んでいます。この専用チャットボットは、Alexaなどの一般向けの音声クラウドサービスにも対応させる形で、小さい農家とっては難しい課題を解析結果を分かりやすい形で提示しながら気軽に相談できるようになることが期待されています。


AI技術をもっと知るために〜機械学習モデルへの理解

将来の社会像を想像することはとてもワクワクするのですが、重要なのはその道筋を切り拓いていくテクノロジーだと言えます。スマート農業で活躍するであろうAIの技術は、オカルトや占いの類ではなく、地道にデータを収集して、適切なアルゴリズム・機械学習モデルを使って解析された結果、明確な目的に達成するためのテクノロジーと言えます。

これまでのところ、農業全体でみた時にAIの活用が進んでいる領域が進捗具合にはまだまだ偏りがあり、農業従事者のAI導入のきっかけを後押ししなければいけない状況ではあります。なので、人工知能の専門家ではない農家と言えど、ある程度はAI技術の概要程度は理解しておくと、「得体のしれない何か」から「気の利いた演算アルゴリズムの一つ」という認識に変わっていくかもしれません。

最近の研究の傾向では、農業分野で最も使われる機械学習モデルは、ディープラーニングANNとサポートベクターマシン(SVM)のようです。

ANNは元々人間の脳神経ネットワークが元となったモデルであり、実際の脳が行っているネットワークパターンの生成、認知、学習、行動の決定などの複雑な機能をエッセンスだけ引き抜いて単純したようなものです。ANNモデルを使えば、農作物の状態の管理、雑草や病気などの検出をカメラの映像から取り込んた画像を解析することができます。近年ではディープラーニングの目覚ましい発展により、農業分野に限らずあらゆる分野でANNの応用範囲が拡大しています。

他方SVMは、データを分類するための分類器です。SVMで用いられるモデルは、からなずしもトレーニングで訓練されたモデルである必要がなく、解析するデータがあればあるほど細かい分類が可能になりまます。農業分野では、農作物の収穫量の予想や品質の分類、畜産では生産量の予測などに活用されているようです。

SVMはかなり機会学習のアルゴリズムでは古典な手法であり、より複雑なタスク対象にはもっと改良されたクラスタリングのアルゴリズムやマルコフ連鎖などの確率モデルなども利用されているようです。

AI主導のスマート農業への取り組みが始まったのは近年のことですが、年々着々と進化したシステムが公開されたりニュースになってメディアなどで大きく取り上げられるようになってきています。

現在のAIソリューションは農作業の過程の一作業であったり、まだまだ細かい課題に取り組んでいる段階であると言えますが、将来的には一連の作業が相互接続されたシステムに統合される形で、最終的にAIベースのフルオートメーション農業へと変わることが期待されています。そのような未来が訪れた時、人間は真の意味で農業による労働からの開放されてなお、安定的な生産量の確保と農作物の品質をさらに向上させることができるのではないかと考えます。

参考サイト

Machine Learning in Agriculture: Applications and Techniques(海外のサイト)