農業と水産業の新しいカタチ〜「アクアポニックス」の目指す循環型農業技術について


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2023/03/02
合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

以前、海外の次世代の垂直農法として
「エアロポニクス」、以下の記事を取り上げていました。

合同会社タコスキングダム|緑のタコの田園地帯
【2021年版】海外の垂直農法技術ダイジェスト

農業分野で成長の伸び代の大きい最新の『施設型垂直農法』にスポットを当てながら「旬な技術」を簡単にまとめます。

"エアロポニクス"は、"空気(エアロ)"と"ハイドロポニクス(水耕栽培)"を組み合わせた造語であり、「土壌を一切必要としない新しい閉鎖空間で行う水耕栽培技術」のことでした。

さて、日本においても次世代の水耕栽培技術に取り組んでいる企業があり、その一つの
アクポニ社「アクアポニックス」を掲げて、その次世代の水耕栽培の普及に努めているようです。

アクアポニックスは、"海洋(アクア)"と"ハイドロポニクス(水耕栽培)"の組み合わせで、閉じた空間で魚資源と水耕野菜を同時に育てようとする、一石二鳥の効率の良い農業技術のようです。

今回は、このアクアポニックスを簡潔にどのようなものか触れてみたいと思います。


アクアポニックス〜循環型農法について

「アクアポニックス」はアクポニ社が提唱する「野菜と魚を一緒に育てる、人にも地球にもやさしい農法」というキャッチコピーの新しい次世代の循環型農業です。

下の模式図の通り、水耕栽培と養殖を掛け合わせ、一つの閉じたエコシステム(生態系)と見なすことができます。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

出図: 株式会社アクポニHP,
https://aquaponics.co.jp/より

        1. 魚の排泄物を回収
2. フィルター内の微生物が排泄物を分解
3. 分解された有機化合物を栄養として植物が吸収
4. 植物により浄化された水を回収
5. 再び魚の水槽へと戻る
        
観賞用のアクアリウムのように狭い閉鎖空間でも植物も水生生物も生きることのできる環境システムがそのまま生産システムに応用された次世代の農業の一つの形です。


経営効率も良いエコシステム

もう一点、アクアポニックスの特筆すべき利点としては、初期投資さえしてしまえば、その後のランニングコストは非常にコストパフォーマンスコスパに優れる、という点です。

下の模式図はアクポニ社の解説そのままですが、原材料費の資金5,000円で購入できる市販の液肥(
液体肥料 ハイポネックス原液
など)と同じ値段で購入できる魚の餌で重さ換算した23kgから最終的に収穫できる量を比較したとのことです。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

出図: 株式会社アクポニHP,
https://aquaponics.co.jp/より

結果的に5千円を元手に見たとき、
トマト3株 < トマト8株 + 魚17kgの差が出るなど大きく収益性がことなるとのことです。

特に、近年のロシアのウクライナ侵攻に伴う化学肥料の価格高騰の影響もあり、液肥も例外ではなく価格上昇の傾向にあります。

その点、魚の餌のほうが入手性も安定しており、時勢の追い風もあってアクロポニックスが脚光を浴びる機会も多くありそうです。

なお、養殖するのに適した魚は少し気になりますが、サイトを見る限りでは、

        チョウザメ
ホンモロコ
ティラピア
アマゴ
ニジマス
        
などが候補としてあがっています。

どれも代表的な淡水魚ですが、ティラピアやホンモロコはとても美味しい魚として人気があるようです。

また、チョウザメからは言わずもがなキャビアが採れるため、林業の廃れた山間部の集落などで盛んに養殖する取り組みが行われています。

ただし、キャビアが採れるには10年程度かかるようですので、チャレンジするには非常に忍耐が必要のようです。


物理ろ過と生物ろ過について

アクアポニックスを語る上で欠かせない仕組みに、「物理ろ過」「生物ろ過」というものがあります。

あまり聞き慣れない用語ですが、アクアポニックスで鍵を握る知識として、「物理ろ過」と「生物ろ過」について簡単に触れておきたいと思います。

        物理ろ過:
    魚の糞などの不純物を効果的に物理ろ過フィルターによって水分と分離させる仕組み。
    物理ろ過フィルターの種類はいくつかあり、主にビーズフィルター方式の採用が多い。
    なお分離率はフィルターの性能によって決まり、
    ビーズフィルターの場合、5~10ミクロンの粒子なら50%、
    50ミクロン以上の粒子ではほぼ100%除去できるそう

生物ろ過:
    バクテリアをろ材やマットなどに定着させ、微生物の力によって水中内のアンモニア等の有害成分を
    硝酸塩などへ分解にさせる仕組み。
    化学分解によって生じた窒素化合物がそのまま水耕植物の養分となる
        
なお、生物ろ過フィルターは探すと結構市販されていて、一般の方も入手することは可能です。

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出図: 逆洗浄機能対応 タンク式フィルター XS300 養殖 ろ過 水浄化
https://aquaponics-onlinestore.com/?pid=172060019

ちなみにろ過器自体に、糞や沈殿物を吸い込んだり吸い上げたりする機能はないので、吸水排水機構は水中ポンプなどを利用する必要があります。

また物理ろ過装置も半永久的に使えるわけではないので、定期的にフィルター部分を交換する必要もありそうです。

バクテリアが魚の糞を分解され汚泥となり、それが水耕栽培において液肥の替わりに養分となるわけです。


まとめ

今回は、国内で勢力的に開発されている新しい農法の中でも注目される『アクアポニックス』について簡単にまとめてみました。

近年、サステナブルな環境負荷の低い新規技術の創出が叫ばれているなか、農業分野でも先進的なデジタル通信技術を取り込んで、これまでになかった新しい農業の確立が急務になっているようです。
記事を書いた人

記事の担当:taconocat

ナンデモ系エンジニア

個人レベルで可能なハイテクx農業を日々模索しています。 時折スマート農業界隈の気になったニュースなどもゆるく情報発信する感じです。