【国内xスマート農業ニュース・ピックアップ】スマートな梨の栽培〜千葉県で実証実験始まる


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2021/09/28
合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

梨は古くより人気も高く、リンゴのように寒冷な気候を好むような土地への育成依存性が大きくないので、全国各地で盛んに作られているフルーツです。

リンゴは青森県が全国生産量の6割弱と突出しており、まさにその県を代表する特産物というイメージがあります。

対して梨の産地と聞かれると、ぼんやりと地元に近い土地のイメージを持たれるかも知れませんが、千葉県が作付面積全国1位となって、長らく梨王国として不動の位置にいました。

最近では、収穫量も伸び悩み、茨城県に首位の座を明け渡し、三位の栃木県にもかなり僅差で近づかれているようです。

近年では梨の品種改良もあり、糖度も高い品種も人気で、ブランド化も進んでいるようです。

また海外からの需要も高まりつつあるため、各生産地も生産量や品質の向上に取り組んでいる動きがあります。

ただしこの15年間で生産量が3割ほど減少し、作付面積は4分の一も減っており、この大きな一因として梨農家の高齢化が進んで廃業したり、労働力が確保できないことが挙げられております。

参考|梨の生産量の推移

さらに地球規模での大きな気候変動により、台風に限らず激甚化災害が増加し、特に毎年大きな台風で甚大な被害を被っている千葉県の生産量がこの数年大きく減少している原因になっているようです。

何はともあれ、喫緊の課題としては、繁忙期にあたる夏期に労働者を多く必要となる梨の栽培を、オートメーション化することで生産量の減少に歯止めをかけるための取り組みが(株)NTTデータと千葉県で始まっています。

今回はちょっと気になるスマート農業のニュースとして、梨の栽培をどのようにスマート化していくのかをまとめてみます。


三本立ての実証実験

現状の梨の収穫作業は当然ながら人間の手で行っております。

農作業での収穫作業は、低い位置での収穫物を摘み取り作業の場合、人間がしゃがんだり起き上がったりすることで腰を傷めることも多く肉体を酷使する労働です。

梨の収穫は、地上1〜2m程度の位置に実がなるものを摘果する作業です。

これも常に腕を上げて行う作業スタイルが地味にきついのと、収穫台車を人力で押しながら摘むため、やはり過酷な労働だと言えます。

また、梨は赤星病や黒星病など、何かと病気に気を使う植物です。

そのため品質の高い果実の生産において、病気を媒介するための殺菌・防虫の農薬散布は欠かせないものになっています。

農薬を利用する上で、その年の状況を見定めて、適切な時期に適切な薬品を適切な量だけ散布する必要がありますが、これはベテランの梨農家の熟練した経験に基づくノウハウであり、機械的にマニュアル化するのは困難です。

近年では、温暖化の影響からか、開花の時期も早まっている傾向にあり、過去の生育方法からでは出荷計画が立てにくくなりつつあるようです。

そのため収穫量の予測も繁忙期の労働力確保も従来の経験的なやり方では難しいという曲面に来ているようです。

このような状況を踏まえて、千葉県は
NTTデータ経営研究所との共同事業として、以下の三つのテーマを設けて、安定的な梨の生産を目指したスマート農業の基礎研究を始めているようです。

        1. 人を自動で追尾する運搬用ロボットの開発:
    生産性の向上・作業の省力化
2. 気象データ解析による病害発生予想と農薬散布最適化ナビケーターの開発:
    環境配慮型の農業にシフトさせ、海外への輸出を強化
3. AIを活用した画像解析による育成状態のモニタリングシステムの開発:
    作業のリモート化を促進
        

この実験は、千葉県市川市と成田市の二箇所の梨農園で、運搬用ロボットやAI、ICTを活用したスマート農業技術の体系化に向けた実証事業として既に開始されています。


ヒト自動追従ロボットの開発・実証

ほ場で作業する農作業者を補助するロボットの開発・導入は既に現実のものになっており、世界を見渡してみると既に導入している企業も多くみられるようになりました。

合同会社タコスキングダム|緑のタコの田園地帯
【スマート農業ピックアップ】サステナブルな農業を目指して〜ワイナリーを支えるAIロボット技術

ブドウ農園での作業用に特化したAIロボットの事例

上の事例ではぶどう農園の事例ですが、梨向けの農作業においても、作業者を自動で追従するロボット作業車を導入することを目指しているようです。

このロボットは収穫の補助のみならず、せん定枝回収・結束の補助や、除草剤散布作業などもできるように、拡張性を持たせるような計画もあるようです。

また、作業者に装着したウェアラブル端末と連携して、作業中の心拍の変化などをモニタリングし、軽労化の効果を数値化しながら効果を検証できるようにします。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

出図:
https://www.nttdata-strategy.com/newsrelease/210908.htmlより抜粋

この作業者自動追従型の作業補助ロボットの導入により、大幅な省力化を実現することが期待されます。


ほ場ごとの気象データに基づく病害発生予測と農薬散布適正化ナビゲーション

このテーマでは、アメダスなどの気象衛星からでは取得できないような、ローカルな気象データを収集するセンサーネットワークを構築するところから始めます。

収集されたデータは栽培支援用スマホアプリ・『梨なび』によって解析・視覚化される仕組みになっています。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

出図:
https://www.nttdata-strategy.com/newsrelease/210908.htmlより抜粋

このアプリでは、黒星病の発生危険度をリアルタイム予測することが出来て、農薬散布適期を適切にナビゲーションできるように実用化を目指しているようです。

この仕組みによって、梨の防除計画の立案が容易になり、使用する農薬の種類の大幅な削減に貢献するものとされています。


棚下から自動で画像を収集/AI生育解析を行うシステム

3つ目の取り組みは、梨の果樹を棚下からの画像を自動収集し、その画像をAIが解析することで育成状態をリアルタイム評価するシステムの開発です。

作業補助ロボットに搭載したカメラでほ場の梨の生育画像を撮影し、適切な生育状態にあるかを自動で診断します。

これにより、生産者は事務所にいながらにして生育状況を常に把握することが可能となり、画像というより客観的なデータを他の作業者とも共有することできます。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

出図:
https://www.nttdata-strategy.com/newsrelease/210908.htmlより抜粋

また、先程の梨なびとも連携して、黒星病の危険度情報や、画像のAI生育解析結果をクラウドサービスとして蓄積して、ノウハウや情報を共同して利用することも可能になります。

またほ場内の作業者へリモートで普及員からの指導をリアルタイムで通信することで、生産者同士の情報共有の可能性が広がります。

参考サイト

労働力不足などの農業現場の課題解決に向けたナシ栽培スマート農業の実証を開始

記事を書いた人

記事の担当:taconocat

ナンデモ系エンジニア

個人レベルで可能なハイテクx農業を日々模索しています。 時折スマート農業界隈の気になったニュースなどもゆるく情報発信する感じです。