【スマート農業ピックアップ】サステナブルな農業を目指して〜ワイナリーを支えるAIロボット技術


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2021/07/21
2021/11/15
合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

日本でもワイン醸造の技術も上がり、ご当地ワインなどもブランド化して、世界に通用する品質の高いワイナリーが増えてきているようです。日本のワイン王国としてもっとも有名なのは山梨県で、二番手は長野県ですが、近年では北海道にも現在40カ所超のワイナリーがあり、北海道ワインというブランドで存在感を強めているようです。

最新のワイナリーもまた自社のブドウ農園で単純労働力をオートメーション技術で置き換える動きもあります。

今回は、日本と海外の取り組みの話題をサステナブルな観点から比較してお届けしたいと思います。


ブドウ農園の課題と無人用EVロボットの活路

実際のブドウ農園では作業の属人化に依るところが多く、オートメーション化が難しい領域とされ、ここ長らく人手不足が深刻化していました。さらに新型コロナウイルス拡大の影響で、外国人実習生の数も大幅に減少したことが追い打ちとなり、繁忙期のパート作業員も集めにくいという厳しい状況下にあります。

以前に、
北海道大学が豊田グループと共同でワイナリーのブドウ農園作業向けに自動運転ロボットを開発したというニュースがありましたが、現在の苦境下の中において、ブドウ農園用無人作業ロボットの登場により、ワイナリー農家の抱える問題解決の大きな糸口を与えるものと期待されています。

自動ロボットのベースとして用いられたゴルフカートは中古トヨタ・プリウスから使われなくなったモーターやバッテリーなどの部品を再利用し組み立てられたもので、圃場内の下草刈りや農薬散布の作業を自動化する目的で開発されました。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

発表された改良型農業用EVロボット。出図先:
http://vebots.bpe.agr.hokudai.ac.jp/news-2021/より抜粋

現在はトヨタの開発グループが合流し、2~3年を目処に実用化へ向けた動きを加速したいとのことの話で、まだまだ運用試験段階とのことです。

ここでの大きなポイントとして、豊田通商は廃車になったプリウスから再利用可能部品を使った事業を本格化させており、本来は廃棄されてしまう自動車部品のリユースを行うことで、環境負荷の少ない農業用ロボットの生産体制が実現するという点にあります。

開発段階であるロボットでは、決められた垣根の間のルートをあらかじめプログラムされたアルゴリズムやセンサーによって、障害物を検知するなどの高度な自走行が可能になっています。また、搭載されたAIと180度広角カメラによって左右のぶどうの生育状況を随時モニタリングし、リアルタイム画像処理を行い、適切な量の農薬をノズル散布していく機能も実装されています。

現状のブドウ農園の営農は、かなりの肉体的労働を伴い、その業務内容は時期や場所によっても多種多岐に渡ります。

果樹園特有の閑散期に当たる草刈りシーズンでは、かなりの圃場面積を少人数で除草作業に集中しなければならないため、無人ロボットでこれを行えるようになればかなりの労働力セーブにも繋がることになります。

またブドウは朝採りの方がみずみずしさを保ったまま出荷できるとされ、鮮度の高いまま消費者に届けれられることが好ましいと言われています。作業時間を選ばない無人ロボットを常時稼働させることで、出荷時間をコントロールでき、安定した生産計画にも貢献することが可能です。さらに夜間を通して稼働させていることで獣害被害を防ぐ効果も期待されてます。

またこのロボットでは防虫防疫のためのブドウの木への農薬散布作業などもできるため、本来ならば農薬の散布作業も農作業員の熟練の経験や知識が必要になります。このノウハウをAIに学習・蓄積させることにより、最適な農薬散布が実現できるため、作業効率向上や農薬使用量の削減も見込まれます。

既にこのプロジェクトは実証段階にあり、鶴沼ワイナリー(北海道浦臼町)で圃場実験で実用性を評価されています。この実証試験では、オペレーターがカメラ映像随時監視して作業状況をチェックし、必要があれば遠隔で複数台のロボットに指示・操作もできるようです。

実用上の目標としては、ブドウの収穫と運搬などの従来は人間の担っていた肉体労働の工程をこの無人ロボットで可能な限り代替することを狙っているようです。さらにこの無人作業ロボットの電源系には、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーを使った電気で蓄電したバッテリーを利用し、さらに自動で充電〜農作業まで完全自律で行えるような仕組み作りを目指すともされています。

合同会社タコスキングダム|緑のタコの田園地帯
[スマート農業 x 話題] ぶどうの摘粒作業を効率化する粒数の自動判定AI技術を開発

山梨大学と民間企業の共同でブドウの摘粒時の粒数を測定する人工知能(AI)技術を開発したとのプレスリリースが公表結果をアーカイブします。


農作業補助ロボットの活用〜大阪府太子町の試み

※2021/11/15更新

フルAIによる農作業ロボットが活躍する時代はまだもうちょっと先になりそうです。

ブドウ栽培の生産に力を注いでいる大阪府太子町では、既に、除草・農薬散布・荷物運搬などの人間にとって重労働な農作業をリモコン操作で行うロボットの導入が進んでいるようです。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

出図: ITMedia News |
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2109/29/news049.htmlより抜粋

地域のブドウ農園では傾斜のある山の斜面で栽培されていることもあり、農作業者の往来だけでも重労働だったという事情もあり、小回りの効くロボットによりオートメーション化を進めてきた効果で、いまではかつての作業時間を7割も削減できたそうです。

また傾斜のある場所での除草作業には、バランスを崩した際の転倒や、不安定な姿勢による除草機械の回転刃での起こる事故が多くあり、リモート操作によるロボットを代替することで安全に作業も出来るようになったようです。

この除草ロボットは、
長野県のロボットベンチャー・「イーエムアイ・ラボ」が開発した1m四方サイズの電動四輪駆動ビークルロボットで、車両の下の刃が高速回転して雑草を刈ることができます。

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出図: 四輪駆動ビークル型ロボット イーエムアイ・ラボ製品案内 |
https://emi-lab.jp/#prdcuctより

現状はオペレーターによるリモコン操作なので、操作に慣れる必要がありますが、技能のレベル次第ではほ場内を全てカバーでき、人間の作業よりも素早く伸びた雑草を刈り取ることができるようです。

ロボット導入による効果がはっきりと数字に表れているそうで、例えば、10アールの面積の除草に従来では112分かかっていた作業が、導入後は37分に短縮され約68%減も減少したそう。

また農薬散布でも従来は74分だったものが65分に短縮され約13%の減少、ブドウ(360kg相当)の貨物を運搬する場合では、従来の30から導入後の20分へと、約33%の減小、と多岐に渡ってその効果が実証されています。

既にこのような地域のブドウ農家に限らず高齢化や人手不足によって、年々出荷量も減少にある状況の中、作業用ロボットによるオートメーション化に活路を見出している自治体も全国に少なくありません。

ブドウなど秋に収穫する果実は繁忙期を前後の短い期間だけで、他のシーズンは労働的に楽になっているというイメージがあるかも知れませんが、オフシーズンとなる冬から春にかけても重労働な準備作業がいくつも存在しています。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

出図: ITMedia News |
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2109/29/news049.htmlより抜粋

またコロナの影響もあり、繁忙期のブドウ出荷シーズンに必要となる期間労働者や外国人労働者などの労働力の確保も難しい状況の中、地方の地元産業の縮小に歯止めをかけるためには、農作業用補助ロボットを積極的に導入することが求められているのかも知れません。


類似の試み 〜 海外の事例から

海外のワイナリーもAIロボットを活用した人間の農作業の軽減化を狙った取り組みがなされています。

米国・フィラデルフィアに本社をおく、アグリテック企業・
Augean Robotics社の運営するブドウ農園での作業用に特化したAIロボット・Burroを開発・運用しています。

「ブドウの収穫と運搬」という作業を切り取って評価するならば、先程述べた日本でのブドウ農園用農業EVロボットの試みよりもこちらのBurroを用いた「スマート・ブドウ農園」の方がより先行している試みと言えます。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

出図:
https://burro.ai/technology/より抜粋

こちらのロボットのコンセプトは、農作業者の補助作業に特化したものになっており、先程の日本の研究グループの目指している無人化作業のできる農業EVロボットとはまた少し違う位置づけの技術なのかも知れません。

Burroは基本的にブドウ農園を巡回し、作業者の業務パターンを察知しながら、収穫したブドウや機材の運搬などを常時繰り返す作業をになっています。

動画出典: Burros at Work,
https://youtu.be/VJT44Wi88LM

AIの高度な学習により、農園内の作業者の動きを妨げないように止まったり、収穫の補助のために自動追尾モードで跡を付いてきたりと、その行動パターンは複雑かつ高度なものになっています。このロボットは搭載されているカメラセンサーによって、ほ場を巡回している最中でもブドウの果実の成熟度、病気の有無、育成健康状態のチェックなども並行して行えるようです。

こちらも電気バッテリー駆動式のロボットあり、化石燃料を使わない環境負荷の少ない仕様になっており、従来の経由やガソリンを使う農耕用機械よりサスティナブルなシステムと言えそうです。

またロボットの行う作業と人間の労働内容を上手く棲み分けすることによって、労働者の雇用の機会を完全に失くすことを無いようにすることは、今後の同じようにAIとロボットを業務に取り入れようとしている別業種でも参考にできることが多いと思われます。

日本の産業界においてデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きが活発化する現在において、このAIやロボットオートメーションのような高度な次世代技術の恩恵が、一部の経営者だけで潤い、失業する人間を増加させる、という構図を生み出すことのないように、しっかりと国がスマート農業分野などでも舵取りをしていって欲しいと願うばかりです。


参考サイト

無人ゴルフカートが散布 AIが薬量調整 中古部品を再利用 北海道大学、北海道ワインなど開発

プリウス部品で農業用ロボ豊田通商と北大が実用化へ

Autonomous farm robot Burro assists human workers with grape harvest(海外のニュースサイト)

作業時間7割減 ロボットで変わるブドウ農園

記事を書いた人

記事の担当:taconocat

ナンデモ系エンジニア

個人レベルで可能なハイテクx農業を日々模索しています。 時折スマート農業界隈の気になったニュースなどもゆるく情報発信する感じです。