LED照明を植物育成を試してみる②〜明るさと光合成の話


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2021/11/13
2022/07/23
合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

前回からかなり時間が飛んでしまいましたが、そちらの内容で
「そもそも明るさとはなんぞや?」という植物の室内育成の基礎となる話をまとめていきました。

合同会社タコスキングダム|緑のタコの田園地帯
LED照明を植物育成を試してみる①〜明るさ概論

LED光源で育てられるノウハウの蓄積として明かりと植物との関係性を基礎知識してまとめてみます。

今回も引き続き、基礎概論的なお話になって恐縮ですが、高校生物の時間で習った?(...著者は選択科目は物理でしたのでなんと言えませんが)光と光合成の関係性をまとめていきます。

ここでは室内で育成したい植物の適切な照明条件とはどのようなことなのかを考えてみましょう。


フルスペクトルLED 300W植物育成ライト 日照不足解消

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光補償点・光飽和点

植物の育成を考えた時に、何がなんでも照明を明るく照らせば良いというものではありません。

農業の分野では、明るさが適切かどうかは、自然光(太陽光)が特定の植物に当たる光合成の量を評価することで決定されるやり方が主流のようです。

明るさの量にもいくつか単位があり、
前回明るさの物理量を説明した内容を思い出して頂くと、ここでは照度(単位[lx];ルクス)が用いられます。

まずは以下のような抽象的な植物の照度と光合成量の関係を理解しましょう。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

一般的に植物は呼吸(CO2放出)と光合成(CO2吸収)を器用に切り替えて行って生きているわけではなく、動物と同じように常に一定量の呼吸を行っています。

光合成は植物の中の葉緑体に光が当たれば、周辺の二酸化炭素を吸収し、酸素を放出する過程が始まるというだけで、あくまでも呼吸と光合成はセットで行われています。

照度が少ない
の範囲では、微量の光合成による二酸化炭素の吸収は始まっているものの、植物自体の呼吸から放出される二酸化炭素の方が割合として多く、結果的に光合成はしていないように見えます。

照度が上がってくる
の範囲では、光合成が活性化し、植物の呼吸を上回る量の二酸化炭素が吸収され、その結果、酸素が外部へ放出されるようになります。

この
の範囲が切り替わる点を、光補償点と呼んでいます。

これは、呼吸速度と光合成速度がちょうど釣り合う点で、
植物が枯れない程度に必要な明るさの照度下限を示しています。

光補償点以下になると、光合成による栄養生成がなくなり、そのままでは植物は枯れてしまう基準とされています。

もっと照度が上がってくると、
の領域に入ります。

この領域にまで照度が上がると、ほとんど二酸化炭素吸収速度が変化しないようになります。

つまり、植物の光合成の能力には限界があり、そこからいくら強い光を当てても生み出せる栄養も頭打ちになってしまいます。

この
の範囲の境目の点を、光飽和点と言い、植物が受け取れる明るさの限界を示す指標になっています。

結局、植物を大きく育てたいがために光を当てすぎても、実際はただ光を無駄に当てているだけになります。それどころか、必要以上に当てすぎると、植物によっては葉焼けで枯れてしまう恐れもあります。

よって植物の室内育成で正常に育てるためのポイントは、光飽和点の照度を保っておけば十分に育つ、ということです。

この光飽和点は植物の種類によって異なり、育てたい植物に最適な照度を良く調べておく必要があるでしょう。

なお、元は砂漠気候や乾燥地帯に自生していた植物などは、光飽和点が存在せず、照度を上げれば上げるほど光合成をするタイプもあるようで、トウモロコシなどは日差しの強い露地栽培には向きますが、室内育成には向きません。

光合成の光吸収スペクトル特性

完全に日光なしの室内栽培を目指す場合には、照明からの光スペクトルが重要になるのは前回述べた通りです。

光合成に大きく関与している光波長は
400 ~ 700nmの帯域幅で存在していて、その他のスペクトルはあまり重要にはなりません。

自然光(太陽放射)は、
300~3,000nmの波長の光が地上に届いているとされ、人間が陽の光を浴びて温かいと感じる赤外光領域(600nm~)が割合的に大きく含まれています。

さらに光合成においては
400 ~ 700nmの範囲ならば、どの波長でも同じ効率でエネルギー変換されているわけではなく、光合成のエネルギー変換特性にも特徴的なピーク構造を持つことが知られています。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

平均的な植物において、赤色光領域のおよそ625nmの675nmの2つの大きなピークと、もう一つは青色光領域(440~450nm)に小さなセカンドピークが重なり合ったような構造の特性曲線になるそうです。

もっとも強い赤色光が植物の生育促進を促し、もう一つの青色光が組織内成分の増強や健康状態の向上に働くとされています。

市販の植物育成用の照明においても、赤色と青色のLEDがベースに設計されています。

植物育成ライトを選ぶときには、出力される光強度だけなく、LEDの放出スペクトルの特性も良く確認してみましょう。


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照度の選択が不可欠?

取り上げ拾える文献から、農作物等の光飽和点と光補償点をまとめて表にしてみます。

植物名

光補償点[lx]

光飽和点[lx]

トウモロコシ

1,800

100,000

スイカ

3,500

80,000

サトイモ

不明

80,000

トマト

1,500 - 3,000

70,000

メロン

3,000

55,000

キュウリ

5,000

55,000

オクラ

15,000

50,000

ブドウ

300 - 400

40,000 - 50,000

イネ

500 - 1,000

40,000 - 50,000

アスパラガス

1,500 - 2,000

40,000 - 50,000

カボチャ

1,500

45,000

ブロッコリー

不明

45,000

キャベツ

2,000

40,000

ハクサイ

2,000

40,000

ナス

2,000

40,000

ニンジン

2,500

40,000

エンドウ豆

2,000

40,000

モモ

200

40,000

ナシ

300

40,000

イチジク

1,000

40,000

ピーマン

1,500

35,000

ショウガ

1,500

30,000

トウガラシ

1,500

30,000

小麦

1,000

30,000

ネギ

2,500

25,000

イチゴ

2,000

20,000 - 25,000

レタス

1,500 - 2,000

25,000

大豆(枝豆)

1,500

25,000

ルッコラ

不明

10,000 - 20,000

ミツバ

1,000

20,000

フキ

2,000

20,000

シクラメン

300

15,000

プリムラ

400

10,000

シンビジウム

300

10,000

セントポーリア

500

5,000 - 10,000

高麗人参

4,000

7,000

アザレア

100

5,000

だいたい花はデリケートであまり照度を多く必要としない傾向にあり、対して露地野菜などはしっかりと太陽の光を与えたほうが成長には良いことが分かります。

室内栽培しやすいと言われるレタスの光飽和点は25,000lx程度で、これは弱い日差し相当の明るさですので、比較的日照時間の少ない寒冷な地域でも育てやすいということがなんとなく想像できると思います。

温室栽培され、生産単価の高いため人気のイチゴも光飽和点が20,000lxであり、室内栽培に向いている植物です。

逆に家庭菜園の定番である(ミニ)トマトは実は光飽和点が70,000lxもあり、強めの陽射しでも元気に育つようで、完全室内での育成にはかなり厳しめなのが分かります。

観賞用植物ならむしろ光補償点を気にする...?

観賞用植物を初めて育ててみよう、という人にとって、購入した植物を室内の何処に置くかで迷ってしまうことがあるでしょう。

おそらくは、太陽の光がないと育たない?と考えて、窓際の近くに置いて育ててしまうことも多くあるのではないでしょうか。

実際は日光を直接浴びるのが苦手で、ちょっとした照度でも葉っぱが焼けて枯れさせてしまうケースが有ります。

直射日光もちろんのこと、西日などの時間にも気を使わないと、その植物が耐えきれない光量を長時間与えてしまうことで、見えざるダメージを負ってしまうのです。

植物の種類によっては、カーテン越しの木漏れ日程度でも十分な育成条件になる可能性があります。

その意味では、観賞用植物にとっては、室内での
置き場所選びが非常に重要になってきます。決して、日当たりの場所がその植物にとって最適ではないことに気を配らないといけません。

そこで置き場所選びにも、「
URCERI デジタル照度メーター
」のような高精度のデジタル照度計が一つあれば便利です。

スマホの光量測定アプリを使っている方もかなり見受けられますが、スマホで測る照度の測定誤差がひどい場合、全く当てにならない数値で表示されてしまうことがあるため、しっかりとメーカーで校正された照度計を持っておくほうが良いでしょう。

また、観賞用植物を育てる上で、野菜や果物の育成とはまた違った考え方が必要になります。

室内で育てる場合、盆栽程度のサイズで長く楽しみたいなら、あまり大きくなってもらっても困りますし、育成速度は出来るだけ遅くしたいものです。

かといって、逆に気を使ってあまりにも照度が足りていないと枯れてしまう...そういう場合、目安としたいのは
光補償点の方になるでしょう。

以下は観賞用としてガーデニングショップ等で目にするような植物の
光補償点をリストにしてまとめてみます。

光補償点[klx]

植物

0.1

アザレア ナギイカダ

0.2

ハラン

0.3

シンビジウム シクラメン ヒノキシダ サルココッカ

0.4

プリムラ ポトス ドラセナ

0.5

セイヨウイワナンテン カラタチバナ キャラボク センリョウ ハマヒサカキ マンリョウ ヤツデ ヤブコウジ クラマゴケ コンテリクラマゴケ ビカクシダ オオイタビ サネカズラ ツルマサキ テイカカズラ ヘデラ ムベ ヒイラギモクセイ ヒイラギモチ カクレミノ サザンカ ヒサカキ ヒメユズリハ モチノキ ヤブツバキ ヤブニッケイ セントポーリア オオバジャノヒゲ オモト カンスゲ コクマザサ シマカンスゲ ジャノヒゲ ツワブキ フッキソウ ヤブラン

0.6

アオキ ゴムノキ シマオオタニワタリ ソテツ カポック アジアンタム モンステラ

0.8

ゲッケイジュ セイヨウタマシダ

0.9

コーヒーの木 マツザカシダ

1

ナンテン アセビ クチナシ クロトン ジンチョウゲ クジャクシダ アラカシ イヌツゲ ウバメガシ クロガネモチ サカキ サンゴジュ シマトネリコ シラカシ シロダモ スダジイ タブノキ トウネズミモチ ナギ ネズミモチ ピンオーク ホルトノキ マテバシイ モッコク ヤマモモ リョウブ ユキノシタ アナナス シャガ ベゴニア

1.6

カランコエ

2

ハイビスカス ポインセチア サボテン オニヤブソテツ クレマチス トケイソウ イロハモミジ エゴノキ オオシマザクラ ケヤキ

※ ここでの照度の単位はklx = 1,000lxであることに注意。

サボテンなどの砂漠性気候の植物は前述した通りで、基本的に光飽和点に上限が有りませんので、直射日光下で放置しておいても元気に育ちます。

観賞用植物として人気の高いバオバブなども、アフリカやオーストラリアの砂漠地帯に自生するもので高さ50m近い巨木となりますが、日本で育てるならせいぜい人の背丈程度が精一杯で、盆栽程度にするのも管理次第です。

観賞用植物の種類にもよりますが、だいたい2,000lxを超えてくると葉や枝の肥大化してくる目安だとされています。

観賞用植物を上手く育てていくコツは、
生かさず殺さずにあると言えるでしょう。


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まとめ

今回は植物全般の育成を行う上で必要な明るさと光合成の知識をまとめてみました。

次回以降でそろそろ植物育成用のライトの試作機を用いた室内での植物の育成を事例を紹介できたらいいのですが、本業時間の合間を縫って出来るだけ努力してまいります...。

参考サイト

光飽和点について

ソーラーシェアリングについて農業現場から思うことー営農型太陽光発電が農業と地域を元気にするツールになる!

植物育成の最低照度「光補償点」とは?一覧と測り方、応用方法

記事を書いた人

記事の担当:taconocat

ナンデモ系エンジニア

個人レベルで可能なハイテクx農業を日々模索しています。 時折スマート農業界隈の気になったニュースなどもゆるく情報発信する感じです。