LED照明を植物育成を試してみる①〜明るさ概論


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2020/10/01
2022/07/28

2020年は連日40度に迫る暑い夏でした。

ガーデニングを楽しんでいたのですが、暑さに弱い植物のうち何種類は葉焼けで枯れて全滅してしまいそうでしたので、萎れない内に何株か鉢植えに移し替えて涼しい場所に置きました。去年は夏枯れしなかった植物も枯れてしまったようで、年々なんだか日本の気候が酷くなっていっているのを肌で感じてしまいます。

弊社もLED光源で暑さに弱い植物を育てられるようなノウハウを研究中ですが、それに先立って明かりと植物との関係性を前知識してまとめてみようかと思い立ちました。


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LEDの明るさって?

世の中には、明るさの指標がいくつか存在していて、ルーメンとルクス、カンデラを頭の隅においておく必要があります。

明るさでもっとも基礎的な単位は
「光度」(単位:[カンデラ/cd])です。

カンデラとキャンドルは同じ語源だそうで、かつてはロウソク一本分の発する明るさを指標化したため、ロウソク一本の明るさが約1カンデラという決まりだったそうです。

現在の定義では、

        周波数540THzの単色放射を放出し、所定の方向におけるその放射強度が
1/683ワット毎ステラジアンである光源の、その方向における光度
        
が1カンデラと定められているそうです。

ワットは1秒あたりの仕事量ですので、光度という物理量が光がエネルギーを送ってくれることがなんとなく分かりますが、ステラジアンというのが少し曲者です。

まず理想的な光とは、光源から球状に広がっているわけですが、下の図のように光源のどこか外側に半径Rの球の殻で包んだとしましょう。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

この球の上にRの2乗分の面積をもつ表面(黄色で囲った部分)をとったとき、球の中心のなす立体角を
1ステラジアン [単位:sr]と定義します。

このステラジアンの定義から考えると、球のまるごとの立体角とは、全球の表面積(球の表面積の公式
4πR^2)から、4π(~12.6)ステラジアン、その半分の半球の立体角は2π(~6.3)ステラジアンになります。

逆に1ステラジアン分の表面積とは、全球の表面積を1とすれば、
1/4π ~ 0.08なので、だいたい球の全体の8%の表面くらいだと分かります。

さて、カンデラとステラジアンが分かると、ようやく
「光束」(単位:[ルーメン/lm])が理解できます。

1ルーメンの定義が、

        全ての方向に対して1カンデラの光度を持つ標準の点光源が
1ステラジアンの立体角内に放出する光束
        
となっています。

つまり光束は、
1ステラジアン分の部分に入る1カンデラの強さの光を1本の束として考えよう、とする物理的な概念です。

光束的に表現すれば、光の束(ルーメン)が多いほど明るくなる、という理解もできます。

最後に残った
照度 [単位:ルクス, lux, lx]という量ですが、これは光が最終的に当たる(照らされる)対象を考慮した光の量を表しています。つまりは、光が当たる側の視点を考慮された指標といえます。

一般には光源から遠ざかれば暗く感じます。これは当然、照明などの光源が暗くなったわけではなく(光度も光束も値としては変わらないまま)、照度が下がるからだと理解できます。

一例を挙げますと、下図のように1m先の対象に10,000lxの照度で当たっているとすると、

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

この対象がさらに10m光源から離れた場合、元の場所から距離が10分の1になっているので、ステラジアンは100分の1になっています。

光源の光度、光束はこの場合どこからでも一定ですが、光の通る断面積を表すステラジアンが100分の1になっているので、照度も100分の1、つまり100lxになっています。

ということで、照度E(ルクス)は、光源から1m離れた位置を基準とした時の光束L0(ルーメン)と光の当たる部分との立体角R^2(光源からの距離の2乗)との間に以下の関係式を持ちます。

        E = L0 / R^2
        
この式からも分かるように、ルクスの単位はSI単位系ではlm/m^2として与えられています。


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植物の成長と照度

植物の成長においては、この照度の考え方が重要になってきます。

どのくらいの明るさや色が良いのかは植物の種類によって異なるようなので最適な条件はこれから手探りですが、とりあえず明るさの目安くらいは最初に考える必要がありそうです。植物の成長の目安が15,000〜30,000ルクスと言われているそうで、これは結構直視できないくらいに眩しくないとそれなりに育成してくれないようです。

ということで、植物の育成のデータを取るのに必須となる照度計ですが、最近では簡易デジタル照度計も手頃な価格で購入できるようになりました。照度計機能だけでみても2,000円台からのものが手に入ります。

今回の実験に用いる照度計においては割と明るい場所での照度の比較になるので厳密な測定精度・分解能は要求されないですし、結果として植物の成長具合が全てなので、比較できるだいたいの照度をサンプリングできる「
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」のような出力のものを用意して使います。

また、単に照度が大きれば良いというわけでもないようです。

LED、蛍光灯やハロゲンランプなどでは、照度が同じでも植物の成長に差が出るとのことで、光源固有の波長スペクトル分布が関係していると思われます。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

まず自然光は可視領域の光成分を満遍なく含んでおり(フルスペクトル)、植物からすると理想的な光源です。

白色LEDは一般的に青色の光成分(460nm程度)に鋭いピークを持っており、最近ではあまり目にはよろしくないためブルーライトカットレンズなどの製品が売られていますが、紫外光・赤外光を除けばそれなりの光成分を含んでいます。

白色蛍光灯はなんだかピーキーなスペクトル分布をしていますが、植物が育たないわけではないそうです。ただ蛍光灯の問題は出力光度が弱く、植物の育成には照度が不足してしまうことの方が問題とされています。

ハロゲンランプは、人工の光源の中では自然光に近しいスペクトル特性を持っており、また照度もそれなりの大きくとれるのですが、かなり光源付近はかなり発熱するので植物に近づけすぎると熱で植物がやられる恐れがあるようです。

なかなか光源にも一長一短がありますが、弊社としては小型電源でも制御しやすいLEDを利用することを念頭に開発を進めていく予定です。

余談〜フルスペクトルは本当に必要?

植物の光合成で特に必要とされているのは赤と青の波長付近の光で、実際のところその中間の波長(緑)は光合成にはほとんど関与していないそうです。植物の葉っぱがもれなく緑色として我々に見えている理由はまさにこのためで、緑色の光が要らないので吸収されもせずに外部に反射・透過されているというわけです。

また、青い光は成長を促す効果があり、赤い光には発芽・開花や果実の色付きに影響を及ぼすと言われているので、白色LEDの特性からいうと、少々赤の波長域の光量が不足するかも知れません。


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LEDの明るさ

前節までで光源から全方位に向けて放たれる一般的な明るさを説明してきましたが、LEDは球で光るというよりはチップが面で光る発光の仕組みであるのでLED照明の明るさは少し取扱いが違ってきます。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

LEDから発する光には指向性がありチップLEDの場合で実際のところ120度程度の範囲で絞られるようですが、指向性を考慮した光束の議論は少々複雑な話になるので、LED照明などのスペック表に記載されている光束とは主に全方位全球に放たれたと換算したときの総量が記載されている場合がほとんどです。

現実でLED照明を使う場合この指向性の問題があるので、「〇〇ルーメンの明るさ」と書かれていても、照度を測る場所によってだいぶ測定値にムラがでます。

よりフェアなLEDの明るさの比較をするには光度を比べたほうがまだベターで、スペックに書かれている光度はLED直下の1m、1ステラジアンの光束の大きさと等価な値となります。

このような理由で、LEDの直射方向の照度を計算で出す場合には、

        E (照度, [lx]) =
    C (スペック表の光度, [cd]) / R^2 (光源からの距離の二乗, [m^2])
        
で計算できます。

余談 ~ 市販の植物育成用のLED照明

とはいえ自作しなくても、たとえば「
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」のような商用化されている植物育成用のLED照明は既にあり、植物の育成に最適化された光源を実現しているようです。

海外では実績のとれた育成用ライトのようですので、手早く育成を試したい方向けの商品といえます。

余談2 ~ R/B比(赤色光/青色光の比率)

市販のLED植物育成ライトには、植物の植物の種類や生育段階によっても反応が異なるのですが、成長のみならず、発芽や開花、茎の伸長、葉の展開などといった成長以外の形態因子への刺激源(情報源)としても利用されます。

植物育成ライトは光質の一般的な構成として、UV-A(近紫外線光:320~400nm)、青色光、赤色光、遠赤色光を混合して制御している場合が多いです。

少し専門的になりますが、(種子)植物には、フィトクロム、クリプトクロム、フォトトロピンの3系統の異なる光受容体が存在していることが明らかになっており、それぞれの受容体が光から受ける刺激によってどのように植物に作用するかまで異なるようです。

植物はこれらの光受容体を使い分け、自分が置かれた環境を感知し、その得られた外界からの情報を自身が生き残るために役立てています。

花の花芽や種子の発芽反応は、フィトクロム(赤色光受容体)の弱光反応と知られて、660nmの赤色光照射で発芽が促進が活性化、730nmの遠赤色光照射によって促進効果を打ち消すような不活性化をもらたす反応です。

遠赤外光が花芽・発芽を成長をストップさせる役割を持っている理由は諸説あるようですが、赤外光が他の植物や枝葉に覆われて、光をライバルに奪われ自身が薄暗い影に置かれてしまった際に、葉っぱが受容する遠赤外線の比率が相対的に上がるので、「自分は今厳しい状況に置かれている」という判断をするためと言われています。

また花芽の形成においては、日長(光周性)をその制御しているのもフィトクロムと考えられています。

ということで植物の成長のブレーキ役になる遠赤外光も、混合光照射に必要とされ、
赤色光/遠赤色光比(R/FR比)のバランスで伸長成長が左右されることも知られています。

R/FR比の目標値も色々と研究があるようで、R/FR比が大きい方が抑制成長側、小さい方が伸長成長側に指向するとされています。

レタス等ではR/FR比は1~2が成育に適しているとされますが、ライトの発光原理等によっては0.8程度が良いという研究もあるようです。

植物の種類によって異なりますが、花芽形成の刺激源として、赤色光・遠赤色光(と青色光)のバランスを考慮すると効果的な育成が可能とされています。

一方で、クリプトクロム(青色光受容体)とフォトトロピン(近紫外光受容体)も重要な役割が知られており、葉の屈光性や気孔の開閉活動、植物の形態形成に大きく影響を及ぼしています。

前節までは、「赤色と青色、どっちが大切なの?」のような捉え方をされた方もいるかも知れませんが、より小難しく考えると、
赤色光と青色光の理想的な混合比率が植物によって存在している、というのがより正解に近い言い方なのかも知れません。

この混合効果としては、植物の節間の伸長作用では、強光下では青色光が抑制効果が高く、反対に弱光下では赤色光の抑制効果が高くなります。

また、陽葉の形成は青色光か強光で、陰葉の形成は赤色光か弱光で、それぞれ成長が促進されるようになります。

この赤色光/青色光の比率は
R/B比という指標でしばしば植物学の文献に用いられているようです。

平均的な光合成の作用曲線においては、R/B比が
2.7程度になり、青色光よりも赤色光成分の方が多いことが効果的な育成になるとされています。

この比率を守っていれば良いかというとそうではなく、完全密閉型の野菜工場施設では、生産効率を向上させるために、R/B比
10以上という条件下に設定することで、より工場の生産稼働率を高めているようです。


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まとめ

ざっと植物育成用ライトの明るさの知識をまとめてみました。

次回以降では実際に植物育成用のライトの試作機を用いて、育成状態をレポートできればいいなと考えております。

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参考サイト

【徹底比較】観葉植物を室内ライトで育てられるか?

植物工場の照明システム

記事を書いた人

記事の担当:taconocat

ナンデモ系エンジニア

個人レベルで可能なハイテクx農業を日々模索しています。 時折スマート農業界隈の気になったニュースなどもゆるく情報発信する感じです。