【国内スマート農業ピックアップ】AaaS・『農業版MaaS』で農機具のシェアリングを目指す取り組み


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2021/07/14
合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

農林水産省と農研機構は、
令和3年度スマート農業実証プロジェクト委託事業の31件を決定し、その委託予定地区とその概要を公開しています。

スマート農業実証プロジェクトは、農水省と農研機構の令和元年から次世代のスマート農業を実践するモデルケースとなる自治体組織・農業団体や企業などをテーマを元に選定・採択し、将来のスマート農業技術に有用なデータを採るための農業分野における重要な国策の一つです。

以前の記事で、スマート農業実証プロジェクトの発展系とも言える、スマート農業推進総合パッケージについて取り上げていたので、興味があればそちらもご覧ください。

合同会社タコスキングダム|緑のタコの田園地帯
[話題 x 国内スマート農業] 農水省策定の「スマート農業推進総合パッケージ」のお話

国内のスマート農業の推進政策・「スマート農業推進総合パッケージ」をポイントを掻い摘んでみます。

今回は令和3年度の新たに採択・追加されたテーマでは、『リモート農業』や『農機具シェアリング』、『スマートサプライチェーン』などのICTを生かした新サービスが多く見受けられます。ここでは著者の独断で最注目な『農機具シェアリング』を掘り下げてみます。


農機具シェアリング

既に都市部などで、自転車のシェアリングサービスなどのMaaS(Mobility as a Service)が話題になって随分と経ちますが、スマホ一つで手軽になんでもシェアリングできる時代の潮流が農機具にも到来しつつあります。

もちろん従来の農機械レンタルリース業などが存在しているわけで、既存のサービスとどういった違いがあるのか、以降で少し検討したいと思います。

実証課題

実証グループ

代表機関

品目

実証地区

広域シェアリング利用によるスマート農機シェアリング体系の実証

スマート農機広域シェアリング利用実証コンソーシアム

イオンアグリ創造(株)

トマト、イチゴ等

埼玉県、千葉県等

ドローンを使った農作業のシェアリング体系の実証

三重北部ドローンシェアリング実証コンソーシアム

(株)つじ農園

麦 、水稲等

三重県

中山間地域の高齢化・離農に対するスマートシェアリング産地支援スキームの構築実証

パンドラファームグループスマート農業実証コンソーシアム

(株)パンドラファームグループ

梅、柿、みかん

奈良県、三重県、和歌山県

多品目広域連携で実現させる「AaaS(農業版MaaS)」によるAI農機シェアリング

AaaSコンソーシアム「広島・島根」

県立広島大学

キャベツ、水稲 、白大豆 、大麦等

広島県、島根県

参考先: 「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」及び「スマート農業加速化実証プロジェクト」の審査結果について

今回の第3回目となるスマート農業実証プロジェクトに置いて、農業分野でも注目される「新サービス」の中で、農機具などのハードウェアをシェアリングするためのプラットフォームの実現のためにようやく一歩踏み入ったように感じます。

特に人工知能(AI)を活用したシェアモデリングの確立に向けた実証実験は、現在の日本の農業で重い課題となっている農業従事者・労働力不足・技術継承の問題や、過疎地域の耕作放棄地の増加問題などの解決の糸口になると期待されています。

県立広島大学が主体となって実証試験に挑む、『多品目広域連携で実現させる「AaaS(農業版MaaS)」によるAI農機シェアリング』の取り組みを例にこのスマート農業シェアリングがどのようなものかを紹介してみます。


AaaS

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

出図:
https://www.pu-hiroshima.ac.jp/p/kenhirosdgs/now/now5.htmlより抜粋

既にアメリカではUberやLiftに代表されるようなシェアライドサービスが定着しています。このようなシェアライドアプリをインストールしたスマホ一つあれば数分で配車を呼ぶことができ、タクシーのような感覚で利用するのですが、支払いも電子決済なので目的地に着いた後の料金の支払いもないですし、配車位置から目的地までの料金をあらかじめ知る事もできて、とても安価に利用できます。

日本ではあまりこのような交通手段分野でのシェアリングサービス・
MaaS(Mobility as a Service)はまだまだ馴染みない分野に思えます。スマホユーザーならば誰にでも使い勝手が良く、とにかく利用料金が安いことで、既存のタクシー業界ととって変わられる可能性もあります。日本では既存の産業が手厚く保護される慣習がまだまだ根強いので、簡単には置き替わらないですし、それゆえにMaaS分野は日本ではビジネスとしては成功をしにくいかも知れません。

それはともかくとして、シェアライドで実際に運転してくれる人間はUberやLiftなど個人契約した一般の人であり、利用される車もその人の持ち物です。シェアライドサービスを運営する企業は、専門のクルマなどは一切保有していない代わりに、スマホアプリから利用するシェアライド・プラットホームを開発・運用しています。

それだけ聞いてしまうと、電話一本でクルマをお客の元に駆けつけさせるようなとてもアナログな業務みたいに簡単な商売なのかと想像してしまうかも知れませんが、実は配車を頼むクライアント側と最寄りの目的地に最適なルートを周って、最短の距離で、最小のコストで、どの契約ドライバーに依頼するのが良いのかは、かなり高度で高速なアルゴリズムで計算処理させなければ成立しない代物です。

特にAIが配車経路計画を最適化することで、効率的なルートを算出し、より乗車利用者数を最大化することで、非常に安価な利用料金の実現にも繋がっています。

さて、スマート農業分野の話を戻すと、このようなシェアライドサービスのようなMaaSの良いところをそのまま農機具シェアリングに当てはめたサービスを
『AaaS(Agriculture as a Service)』として構築できないかを検証するのが今回の大きな狙いのようです。

以下の概要図に沿ってこのAaaSのコンセプトを説明していきましょう。

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出図:
https://www.pu-hiroshima.ac.jp/uploaded/attachment/17393.pdfより抜粋

まずは管理組織(サービス開発者)は、AaaSプラットフォームをクラウド上にサービスを構築して、基本的にはスマートフォン向けのアプリとしてそのサービスを提供することになります。

そしてユーザー(ここでは農作物の生産者)は手元のスマートフォンにアプリをダウンロード・インストールを行い、個人情報などのユーザー登録を済ませておくことで、好きな時に、予約日時や概算料金などの検討しながら農機械や専門のオペレーターを含む利用したリソースを予約することができます。

他方で、農機械などの扱いに慣れておりトラクターやコンバインなどの保有している個人の農業従事者や団体などで、時間的労力的に余裕のある人はAaaSプラットフォームにオペレータや貸出可能農機として登録しておくことで、利用者からの予約が入り次第、こちらもスマホアプリに業務依頼が届くことになるのかも知れません。

まだ検証実験中ですので、最終的なAaaSプラットフォームサービスの全容は手探り段階ですが、利便性とコスト面を強調して、優位性を実証できれば、スマホアプリと農業を融合した新しい形のビシネスとして成立する可能性もあります。


実証試験の概要

AaaSをビジネスとして成立させるには、①クラウド上にAaaSプラットフォームを構築しながら、専用のスマートフォン向けアプリも開発する運営開発側、②AaaSプラットフォームを利用する農業生産者、③農業機械や専門知識を提供できる貸し手、の3つの要素上手くマッチングさせなければなりません。

初期段階である現状では、主に①と②の連携させるための検証という意味合いが大きいようです。

以下の図のように地域に点在する複数の生産者を対象に検証試験が進められ、あらかじめ登録された農機やオペレーターを効率よくシェアするためのデータ収集や、スマホアプリやシステム開発が行われる予定です。

合同会社タコスキングダム|TacosKingdom,LLC.

出図:
https://www.pu-hiroshima.ac.jp/p/kenhirosdgs/now/now5.htmlより抜粋

なお③の要素にあたる貸し手は、検証実験中は「準備室」と呼ばれ、重原農園(庄原市西城町)の一組織が担当するようです。

検証試験の掲げる目標としては、プラットフォームを利用した農業生産者の農機具の導入コストを半減させることと、生産面積および売上高を1割向上させることが掲げられております。


参考サイト

令和3年度「スマート農業実証プロジェクト」の採択について

山間地の「スマート農業」AIによる農機シェア 日本初のAaaS(農業版MaaS)が農研機構の事業に採択

【広報資料】農機具をシェアリングするスマート農業が農研の事業に採択

「農業版MaaS」(AaaS)で農機具をシェアリング~山間地の「スマート農業実証実験」が農研の事業に採択

記事を書いた人

記事の担当:taconocat

ナンデモ系エンジニア

個人レベルで可能なハイテクx農業を日々模索しています。 時折スマート農業界隈の気になったニュースなどもゆるく情報発信する感じです。