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2020/08/30
以前、静岡県のLoRaWANネットワークによる水田水位遠隔管理の記事では、LoRaWANでの水田の水位リモート制御の取り組みを解説しました。LPWA(Low-Power Wide-Area)を活用した大企業と地方自治体の連携した地方産業活性化への取り組みは、各地で色々と展開されています。今回は、農業に限ったIoTネットワークサービスの利用例ではありませんが、国内での山岳地などの人間が容易に立ち入ることのできない場所での計測データ取得に関する取り組みとして、東芝エネルギーシステムズが商用化を進めているLPIS™
の概要を取り上げてみます。
ToT-LPWAサービス・LPIS™
LPIS™は、山岳地等の携帯電話サービス未対応地域であっても、920MHz帯のLPWA技術を応用した独自の無線ネットワーク技術を用いて、センサー等でサンプリングしたデータを安定的・継続的に送信するソリューションを、サブスクリプション・サービスで提供するもののようです。出図:https://www.toshiba-energy.com/info/info2020_0827.htm
, LPIS™の概要・システム構成この図でいうところの無線マルチホップ技術というのは、分散したネットワーク(図中のA,B,...)毎に送信されてきたデータを、複数設置されたLPWA機器を介してリレー方式で中継することで、広範囲から得られる測定データをリアルタイムでカバーする通信方式のことを指しているようです。センサノード(水位計、雨量計など)からLPWAを介して送信されたデータは、ネットワーク中のLPWA中継器によりバケツリレー形式で中間転送を繰り返し、別の建屋にあるコンセントレータで一旦集約されてから、通信事業者が提供する衛星電話サービスの一般回線網(WAN)に送信されます。東芝エネルギーシステムズ社の強みとして、センサノード・中継器を独自の設計することで省電力を実現し、乾電池でも長期間作動させることができるそうです。またLPWAネットワークの設置も、中継器を追加するだけで、簡単にカバーする範囲も広げることができるように工夫されているとのこと。
取り組み内容
このニュースでは、東芝エネルギーシステムズ社は同グループ会社からの委託業務で、LPISを利用した長野県の中部山岳国立公園内の4か所から水位・雨量データを遠隔で収集・提供するサービスを開始したという内容になっています。測定を行う水位・雨量観測局のほとんどは険しい山間部に点在し、車によるアクセスができないため、作業員が徒歩で往復5~6時間かけて現地へ直接データ収集する必要があり、時期によっては直接足を運ぶには困難なときもしばしばであったようです。そこで今回の約20台の中継器を設置、総延長約4kmのLPISネットワークを導入したことで、こういった状況を改善し、さらにインターネット経由でリアルタイムのデータを社内事務所でデータ収集が可能になりました。最終的に計測データは顧客に提供され、今後は水力発電の稼働状況を最適化した高効率発電を行うための解析等に利用されていきます。
今後のサービスの展望
東芝エネルギーシステムズ社では、2018-2019年にかけて渓流取水水位監視の実用的な実証実験を行っていて、2020年初めに最初のソリューションパッケージを納入した実績があります。産業方面の応用を考えると、生産現場で稼働する機械や設備などの故障予知や運転状況最適化などに応用されることが期待されています。農業分野でも、水田水位の遠隔管理や害獣モニタリングサービスなどにも応用できそうに思います。各社で同種のサービスの競争が起こってくるようになれば、より低価格で高性能なLPWAサービスが当たり前の世の中になっていくかもしれません。参考
「省電力無線IoTソリューション(LPIS™)」で初のデータ収集サービス事業を開始 | ニュース&プレイスリリース 東芝エネルギーシステムズ株式会社