【スマート農業コラム】ラウンドアップ(グリホサート系農薬)は本当に人間にとって悪なのか


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2022/03/20

色々と年始から細かい業務が入ったので本ブログも久々の更新です。

さて、スマート農業の旬なトピックを定期的に取り上げている当ブログですが、
「スマート農業で●●な最新技術が開発され、農薬に頼らない無農薬栽培が可能になりました」という文言が度々散見しております。

この表現の背景にある思想としては、「やっぱり農薬は健康に悪い」「できれば無農薬野菜を消費したほうが安心」というのが一般の消費者のマインドにしっかりと根付いており、その結果、『無農薬』・『有機栽培』が非常に付加価値の高い、魅力的なワードとして人々の心に刺さるのは確かです。

他方、グリホサート系の農薬はホームセンターで簡単に手に入るため、庭の除草剤として個人的には大活躍しているのですが、いわゆる「ラウンドアップ」と言えばかつて世界中で大きな訴訟問題を引き起こした「拭えぬ悪名」をイメージされるかたも多い事でしょう。

恥ずかしながら著者としては、ここまで農薬不要と言っておきながら、実際には農薬製品がどれだけ人類に貢献しているかこれまで考える機会が殆どありませんでした。

今回はこのグリホサート系の農薬を題材にして、割と便利に使っているのに、その成分や人体に与える影響のことをあまりこれまで知らないで利用している農薬の話をささやかながらまとめてみたくなった、という話をコラム形式で書いていきます。


危険な農薬って本当に出回るものなの?

もう何年か前になりますが、だいぶ前に他界した祖父が米を中心にかなりの作付け面積で手広くやってた農家だったこともあり、ずっと手付かずだった農作業用の納屋を整理していたところ、それはもう大量の農薬が見つかり、全て処分するのにえらく時間と処分費用がかかりました。

著者自身は現在農業を生業にはしていないので、基本的に残留農薬の扱いは購入元に連絡して処分方法などを相談するわけですが、一番困ったのは昭和の中頃に使われていた薬品であったり、ラベルが擦れて中身が何なのか分からないものであったりと、これまた処分作業が進まないのが大変苦労しました。

とはいえ
50年以上の時を経て見つかった得体の知れない昭和30~40年代の農薬をせっせと素人が処分していたわけですので、下手に吸い込むとかなりやばい成分が含まれているかも知れないという不安も脳裏によぎりながらも、取り敢えず防塵マスクと防護グローブくらいで何とか乗り切りました。

いま思うと、現在国から使用認可を受けている農薬というのは、何十年前の農薬よりも非常に厳しい評価基準をクリアして今に至っているわけで、「間違って飲んでも安心!」という訳では無いですが、おそらく昭和の農業にガンガン投入され利用されていた農薬より人体へ懸念される影響というのは著しく低いものになっていると考えられます。

何を言いたいかといいますと、現在市販されている農薬類は、非常に厳しい国の検査基準と長い評価期間を経て販売に至っている
安全性・信頼性の高い農薬商品と言える訳です。

とはいえネットで匿名の人間の書き込みで偶に目にする国家陰謀論のようなものが存在しています。「国は重大なデータを隠匿し、危険な農薬を認可している」とか「米国の巨大な製薬会社に与して日本の土壌で国家ぐるみの農薬試験をしている」とか、根も葉もない話の類です。

国家陰謀論以前に、根拠もなくそういった書き込みが出来る人の精神状態を疑ってしまいますが、日本の農薬認可までの道のりには、官民問わず様々な分野の専門家や権威のある組織・団体が厳しい審査を経ていますので、戦後間もない時期ならつゆ知らず
人体や環境に高リスクな成分を含む農薬が市場に出回ることは現状不可能な話です。

可能性で言えば、大学の研究室や薬品メーカーから開発中の未承認薬剤のサンプルが不正に持ち出しされてしまうケースなどがあるかも知れませんが、それはもはや不正事件ですので農業とは無関係と言えます。

ともかく、
危険な農薬はおいそれと入手できるものではないということをここで強調しておきましょう。


悪しきイメージで槍玉に上げられた悲運の農薬〜ラウンドアップの現在

皆さんは「ラウンドアップ」と聞くとどのようなイメージを持たれているでしょうか。

おそらくはラウンドアップの名前に良い印象を持ってない方も未だ多いでしょうし、残念ながらラウンドアップに付きまとう負のイメージはおそらくこれからも消えることなく、払拭するのも難しいのかも知れません。

ラウンドアップの安全性については日本国内の販売元である日産化学のHPなどでも詳しい紹介されているため、興味のある方はそちらを見ていただいた方が良いでしょう。

参考|安全性について

ラウンドアップの安全性にまつわる非常に詳しい情報を発信されている団体・組織や企業がある一方で、
「ラウンドアップ 危険性」と検索すると非常に客観性を欠いた独自の解釈を基に根拠のない事実をあたかも当事者がとして見てきたように書かれているサイトも未だかなりの数で存在しています。

インターネットの普及によって、信頼できる情報と虚偽・悪意の潜んだ情報が氾濫する状況の中で、それが誰にでも手の届くような社会においては、その情報の真偽を自分自身の頭で精査できる能力が必要になります。

そう言ってしまうと、折角この記事を見て頂いている方でも、「この記事は何だかうんくさい感じがする。これは著者の妄想ではないのか」と最初から斜に構えて読んでいただいたとしても否定はしません。

とはいえ、情報の真偽を自分で判断するには、その分野に精通した専門知識と、膨大な研究資料などの理解に加え、自分の考えをまとめる十分長い思考期間を要することになるでしょう。

著者も含めてですが、おそらく大多数の人が、ラウンドアップを危険と断じるほどの知識や経験を持ち合わせはいないはずです。

よって、
「その道の権威が仰るには...」という天下り的な情報元から、その真偽の判断を委ねる形で自分の判断基準をすり合わせる他にやり方はないとは思います。

著者も門外漢ではありますが、ここ最近で
AGRI FACTという、農業技術通信社の運営する食の安全と農業ビシネスに特化したウェブメディアサイトを記事を目を通して、ラウンドアップの見方が大きく変わりました。

かなり地道な自社研究と、じっくりと論文やその分野の発表されてた情報の検証に時間をかけられた記事なっているので、分野は違えど同じ研究者としては中々真に迫る内容のように思います。

参考|ラウンドアップはなぜ風評被害に遭っているのか?【解説】

参考|農薬の安全性はこうして保たれている – グリホサートの真実とは2【完全版】

ラウンドアップの安全性のより詳しい情報の他にも、食の安全に関する興味深い記事が、AGRI FACT内で紹介されていますので、色々と読んでいただくと面白いかも知れません。

ではなぜラウンドアップだけが『悪役』にならなければいけなかったのかを少し考えてみましょう。


農薬の含有量を示す単位〜「ppm」

いきなり全く別の話に逸れるという訳ではないですが、「ppm」という単位を知っておくと定量的なイメージが付きやすいので、食の安全を考える上で覚えておくと便利な指標です。

parts per millionの頭文字を取った略語で、日本語に直すと「百万分率」です。

millionが100万を表しているので、
100万分の1の比率を表す量になります。

百分率は%(パーセント)という単位ということはかなりの人が常識として知っていると思いますが、ppmは小さすぎるということもあり知らない人が圧倒的かと思います。

平たくいうと、
1ppmは、1%の1%の1%です。

またppmは結構幅広い分野で使われてる単位であり、その使い方は分野によって違いがあります。

近年コロナ対策で一気に普及した二酸化炭素濃度計で用いられることでもppmもかなり身近になりました。

例えば二酸化炭素濃度計を利用するときに、地表の二酸化炭素の平均濃度は400ppm程度と言われており、その気体の濃度は体積比率を示しているので、「その空間の空気1Lに対して二酸化炭素は0.0004L含まれる」ということを意味しています。

ガス濃度計に対して体積比率を使ったわけですが、食品添加物や農薬などで使われる成分含有量濃度は、
「重量比率」であることが多いようです。

現在国の設けている海外からの輸入作物に混入されている未承認農薬の残留基準は一律0.01ppmが適用されるようになっています。つまり1gの量の中に農薬成分が0.00000001gまでしか許可されていないことになります。

ゼロが多すぎでその小ささがあまりピンとこないですが、100トンの重さの食糧で換算すると、その中に農薬1gまでに抑えられていないといけないということになります。

100トンというと、これはちょうどジャンボジェット本体の重さがそれくらいで、1gは一円玉一枚の重さだそうなので、ジャンボジェットの中に一円玉を持ち込んだだけでアウトになるような基準と同じです。

なおこの日本における0.01ppmという基準は、他の先進国の基準と比較しても、かなり厳しいレベルに設定されているようです。

勘違いしてはいけないのが、農薬の残留成分が完全にゼロという状態を探すほうが難しいというか、人の立ち入ったことのない原生林レベルの田んぼや畑を探そうとなるとそうそう存在しないほど珍しいケースになるでしょう。

また現代農業において、水田や田畑で用いられた農薬が完全に分解され、土壌の成分として完全に検出されなくなるまでには何十年という歳月を経て自然の力で浄化されるのを待つほかはありません。

なので人類が農業に化学農薬を用いるようになってから今日に至るまでの経済活動において土壌に排出された成分が残留しているケースの方がほとんどで、とにかく微量ながらも現在の農作物には何らかの農薬成分が含まれるのではないかと思います。

ほ場の土壌に含まれる農薬成分が限りなくゼロに近い場合においても、環境分野の研究実験ではゼロという表現は避け、“検出下限以下”などと表現されてます。

近年の分析機器の化学成分の検出分解能の進化は著しく向上しており、
残留農薬研究所の残留性試験における現在の検出下限は0.01ppb(1000億分の1)になっています。

ppbはparts per billionの略語で、billionは10億の意味になります。つまり1ppbは0.001ppmなので、0.01ppbは0.000001ppmとなります。

ここまで精密に測れるようになっている方は驚きですが、計器がどこまで進歩してどれほど微量まで測れたところで、「では健康に及ぼす可能性はゼロではないの?」と問われると、専門家は未来永劫「可能性は限りなく低いが、ゼロではない」と答えるしかないのです。

これは科学とは並べてそういうものであり、科学者は立場上、起こる事象を統計学的な視点で物事を客観的に測るしかないのは仕方がありません。

しかし科学者ではない、一般の人が専門家から「人体に及ぼす可能性はゼロではない」と聞くとどう受け取るかというと、「あ、専門家が可能性がゼロではないと言っているから危険なんだ」という心理的にさせられることも仕方のないことです。

著者も長いこと工学研究者として色々と忙しくしていた身ですので、一般の方に申し上げておくと、研究者の「ほぼ限りなくゼロに近い」とか、「厳密にはゼロではないけど、ほぼ無いと言って良い」などの表現は、
「ホントはゼロっていい切りたいけど、ゼロって言っちゃうとその分野の怖い人達から怒られるから察してね」ということです。

数学者以外の研究者としての立場上、ゼロと言い切ることに抵抗があります。

この専門家と一般の消費者との押し問答はおそらくこれから先も長らく続いていることでしょうが、専門家がゼロに近いという煮えきらない表現を使えば、「ゼロなんだろうな」と前向きに受け取ってあげてください。


有害物質の「有害性」をもう少し掘り下げる

さて、先んじて前のパートで「ppm」という話をしたのは、“真なる”有害物質が土壌や海洋環境にどのくらい含まれているかの評価に使われている指標になっているからでした。

前述までの内容で「有害物質だー、有害だー」と既知のようにこの言葉を使ってきましたが、皆様はどのような物質を思い浮かべていらっしゃるでしょうか。

化学物質の持つ性質の影響のどこまでを有害と規定するかは難しい判断が必要ですが、国際的に人体や環境に有害な影響を与える物質・通称
POPs(Persistent Organic Pollutants, 残留性有機汚染物質)が指定されて、国際環境条約で規制されている類の有害物質が存在しています。

参考|POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)とは - 経済産業省HP

これらのPOPsに該当する有害物質は、前述したラウンドアップの主成分であるグリホサートなどとは比べものにならないくらい環境への危険性の高い、ガチの有害物質です。

POPsで特に問題となる性質が
難分解性生物蓄積・濃縮性を有しており、海洋資源を通じて、結果はPOPsを取り込んだ魚介類を摂取することで人体へも直接影響していきます。

これらPOPsは、かつては身の回りのさまざまな製品に利用されていた経緯があり、たとえばPBDEは建材や繊維などに難燃剤として使われていたり、PCBは変圧器・コンデンサ等の電気絶縁油などに利用されていたため、メーカー側が該当製品の自主回収を実施していることでも話題になりました。

またかつて日本でも昭和40年代初め頃まで農薬として利用されていたDDTは、現在POPsに指定されています。

参考|DDTはもう使われていないのですか。- 農薬工業会HP

これを聞くと、もう現在の魚介類は食べて大丈夫なのか?と感じられる人もいると思います。

国の定める魚介類の暫定的POPs規制値は遠洋沖合魚介類で0.5ppm以上、内海内湾魚介類3ppm以上となっています。

現状の日本沿岸水域の水産資源のPOPs濃度は規制値と比較するとまだ十分低いレベルにあることが海洋調査の結果で示されています。

参考|海洋プラスチックごみとマイクロプラスチック(下)- 旭リサーチセンター調べ

で、ようやくここで本題に戻りますと、前節で述べていた農作物に含まれる農薬成分の残留濃度基準を思い出していただくと、未承認の農薬だとしても一律0.01ppm以下です。

それに対して、環境汚染が認められる有害物質のPOPsを含む濃度上限は内海で獲れるものだと3ppmまで許容されています。

これに関しては、海洋資源の有害物質規制が緩すぎると見るか、農作物の有害物質規制が厳しすぎると見るかは、その分野の専門家でも無い限り判断のしようはありません。

ただ、現状の農作物で農薬成分含有率が基準値以下であるにもかかわらず、
「ラウンドアップだけは何ppmあっても絶対に許されない!」というラウンドアップだけ危険論を吹聴し、騒ぎ立てている人たちの主張は、科学的な根拠も薄く、主張内容が明らかにおかしいことだと気づくことでしょう。

そりゃ、人間生きていれば、どんな食べ物にだって大なり小なりのリスクを含んでいるのは覚悟しなければいけないわけですが、POPsなどに目を瞑り、特定の化学物質だけを目の敵にするやり方は宜しくないことです。


ついでに考える「ラウンドアップ騒動」の舞台裏

どのような時代にも国や事象を問わず、騒動を焚き付ける裏で得する人たち、利益を享受する人たちが存在しているのは確かで、悲しくもあります。

最近であれば、新型コロナウイルス感染症ワクチンの危険性を訴え、反ワクチン接種派とワクチン接種推進派の無用な意見衝突を煽り立てる形で荒稼ぎしているようなケースもあるようです。

参考|「ワクチンは危険」陰謀論を唱えて稼ぐまとめサイト運営者の不埒な言い分

このような
「炎上ビジネス」の基本的な構造は、インターネットによる高度情報化で容易に明るみに出ていまうようになる以前から、人間社会の裏側に根強く存在していたものと推測します。

特に食の健康や住居などの人間の営みに欠かせない事象を狙って、根拠のない噂を誇大に吹聴し、それに反対意見の集団と賛同する集団を分断、更に意見の溝を拡げさせ、あとは勝手に両者の争いが生じ、さらに煽れば煽るほど儲かるような仕組みを騒動の裏側で“デザイン”するのです。

ラウンドアップ騒動が起こった90年代後半から2000年初頭までは、インターネット時代の黎明期であり、「炎上ビジネス」という言葉も存在していなかったわけですが、ラウンドアップ騒動を語る上で欠かせない、
遺伝子組み換え食品の健康問題が先行して取り沙汰される時代でもありました。

今でこそ、日本では遺伝子組み換え作物の国内栽培は環境への影響を考慮して厳しく取り締まられているのが現状ですが、実際は海外から輸入される食品の原材料のほぼ半分以上が遺伝子組み換え作物だと言われています。

つまり皆さんの食卓にのぼる食物の材料として、確実に遺伝子組み換え食品を摂取していると言っても良いような状況です。

国が遺伝子組み換え作物を禁止している理由は、貴重な在来の植物や作物と交配したり、置き換わったりするのを未然に防ぐための措置であり、食の安全性という観点からではありません。

おそらくこれまで遺伝子組み換え食物を摂取して健康被害が出たという事例は日本国内で発生してはいないと思われます。

ここでいう農作物へ実施されている遺伝子組み換え技術とは、1970年頃までに確立されていた技術をベースに発展してきたもので、近年の遺伝子構造を自由に切り貼りできる最新バイオテクノロジー技術と比べるとローテクなものになっています。

参考|遺伝子組み換え作物とは-バイテク情報普及会

この農作物の品種改良で利用される遺伝子組み換えがやっていることは、かつては人類が何百年単位で行ってきた作物の品種改良を数〜数十年の短期間で行うための代替・延長の技術です。

遺伝子という“神の領域”を操作するという倫理的・宗教観的な立場から賛否はあるものの、所詮は偶然の産物で良い感じの組み合わせを見つけようという発想で行うものですので、偶然だけである日突然危険な物質を生み出せる生物兵器のようなものが誕生するはずもありません。

遺伝子組み換え作物の食の安全性に関しては、以下のリンク先の記事に歴史的な経緯も添えて詳しい話が紹介されています。読みものとしても興味深いですので、興味があれば一度ご覧ください。

遺伝子組み換え作物の安全性 |安全性についての誤解-バイテク情報普及会

その分野の専門家や研究機関のこれまでの努力も相まって、遺伝子組み換え作物の安全性も大分市井に認知されてきていると思いますが、それでもやはり遺伝子組み換えという言葉に不安を感じられる方は年配層を中心に今も一定数存在している、というのは聞き及んでいるところです。

ラウンドアップの誕生と、遺伝子組み換え作物(GM食物)との関係性は深く、「ラウンドアップレディー」と呼ばれる耐グリホサート性を持つGM食物の品種と、ラウンドアップを組み合わせた農業によって、ほ場でそのGM作物“しか”育成できないような環境を実現する、当初は夢の農業技術とされていたようです。

とは言え、その時点ではGM作物が健康へ及ぼす影響への研究が十分になされておらず、この
「食の安全への疑念」が当時のマスコミや出版業界に目を付けられ、今でいう炎上ビジネスの恰好の標的になってしまったようです。

前述したラウンドアップ騒動のパートでも言及したように、反対派と賛成派に社会を分断し、両者の溝を深め、論争に拍車を掛ければ掛けるほど、GM作物やラウンドアップ関連の書籍や出版物は売れに売れ、メディアで特集番組などで視聴率が上がるほど大きなスポンサー料も稼げたのだろうと思います。

結局蓋を開けて歴史をと振り返ると、現在に至るまでに、このGM作物やラウンドアップの論争の件で、勝者も敗者もなく、一般の人々には悪いイメージだけが記憶として残り、他方で裏でこの炎上ビジネスを演出し、デサインしていた一部の人間だけが莫大な利益を享受しただけ、ということしかなりませんでした。

ただこうした人々の生まれながら抱いている「食の安全への疑念」を突いた炎上ビジネスが社会に残す爪痕は非常に大きく、たとえ科学的な根拠を示してリスクコミニュケーションを行ったところで、悪しきイメージそう易易と払拭出来ない、というのは以下の記事のように食の専門家も述べられている通りです。

「食の安全」はなぜ、伝わらないか【FOOD NEWS ONLINE】

個人的な見解として、炎上ビジネスで流布されたフェイク情報などで人々の記憶に残ってしまった悪しき記憶は、時間を経て世代交代が進み、その記憶が風化するのを待つしか無いように感じてしまいます。

ただし、インターネットやSNSの登場により、デジタル情報として社会の出来事が常に記録されてしまう時代において、人々の記憶の風化のスピードがかなり緩やかにもなってしまう懸念もあります。

更に炎上ビジネスも、インターネットやSNS上から行われることが多くなり、その匿名性により、発信者が分かりにくく、さらに手口も巧妙になってきています。

何処かの段階で、
社会全体が「炎上ビジネスをやらない、起こさせない」といった周知のルール作りに取り組まなければならない時にきているのかも知れません。


まとめ

ここまで著者の思いついた拙い文章を読んで頂きありがとうございました。

今回はスマート農業の話題から離れて、少し社会派なテーマをつらづらと書き及んでまいりました。

そもそもスマート農業において、「農薬フリー」の課題は大きなテーマの一つですので、弊社も農薬を利用しないこと前提で色々と企画を練っております。

他方、趣味の園芸ではラウンドアップを結構使っているので、「土壌で使った農薬の成分は最後は一体どこへ行くのだろう...?」と思って、調査したのが本記事を書いたきっかけでした。

現代の農薬のことを調べていく内に、やはり一般の人々には全体的に良いイメージは持たれず、忌み嫌われながらも、全人類80億に迫る時代にさしかかり、もはや人類の食料生産事情を考えると欠かすことのできない、食糧問題解決の重要な農業技術の一つだと再認識されてしまいました。

スマート農業が主流となる未来はまだまだ先のことになります。それまでは食料生産の分野で農薬の果たす役割は重要であり続けるでしょう。

我々が出来ることは、農薬に対する裏付けのとれた正しい知識をもって、上手く農薬と付き合っていくことしか出来ないように感じました。

記事を書いた人

記事の担当:taconocat

ナンデモ系エンジニア

個人レベルで可能なハイテクx農業を日々模索しています。 時折スマート農業界隈の気になったニュースなどもゆるく情報発信する感じです。