※ 当ページには【広告/PR】を含む場合があります。
2021/02/15
完全密閉形の植物工場の建設が各国で行われていますが、国産のアグリテック企業も海外に負けず劣らず日々進化を続けているようです。今回はプランテックス社の植物プラント工場の概要が大変興味深かったので、プランテックス社独自の技術の概要を独自解析してみます。
完全クローズド植物育成装置の概要
プランテックス社は完全密閉形の植物育成装置を独自に製造・販売している世界でも珍しいアグリテックメーカーです。主力の製品であるCulture Machineは、複数の段構造を持つベッドごとに独立した断熱された空間を有しており、人間の手を一切介さないで完全制御できるクローズドな栽培装置になっています。完全密閉な環境を一つの装置で実現することは、とても高度かつ複雑な技術であり、以下のような概念図からも分かるように、温度センサーやモニタリングカメラなどさまざまなハードウェアノードを大量に実装し、局所的にきめ細かい操作ができるように可動部分、動作機構などを狭い空間に配置する必要があります。クローズドな植物育成装置の概念図 出図: http://www.plantx.co.jp/ledplantfactory/
この概念図に示してある通りで、本来は温室ビニールハウスで数個分に相当する作付面積で生産できる作物の量が、多段構造かつ高密度にパッケージングすることで一つの装置に集約できるのは、高い技術をもった日本の装置メーカーのなせる技だと考えます。プランテックス社は既に大規模な消費者の需要量に応えるための実用段階に向けた量産用モデル(Culture Machine Type-M)も既にロールアウトしており、今後もさらなる大型化の装置を狙って市場競争力を高めていくのだろうと思われます。Culture Machine - Type M (量産に適した大型モデル) 出図: http://www.plantx.co.jp/hardware/
格段の栽培ベッドごとに区切られた密閉空間を、それぞれ独立した空調と養液循環システムで管理し、遠隔操作で精度の高い操作を実現できるのがこの装置の大きなメリットです。この装置の制御対象として、植物の成長に影響を与える3大要素である光・空気・水(+養液)を全て備えているため、オペレーターが外部からアクセスする機会を著しく減らすことができます。そして、この高精度なオペレーションをソフトウェアベースで一貫して行えるので、熟練の農業従事者が長年かけて体得できるような作業が、装置内で安定的に行えるために、非常に高品質な食物野菜の生産ができるのもこの完全密閉形の植物育成装置の大きな特徴です。当然ながら完全クローズドな環境ですので、害虫や菌類などのもたらす病気のリスクを最低限度に保ちつつ、農薬を使わないで育成できるので高付加価値の野菜が持続的・安定的に生産可能です。この装置の高度な操作を実現させているのが、装置の独自制御システムSAIBAIXと位置づけている制御管理ソフトウェアのようです。標準制御システムSAIBAIXの概要図 出図: http://www.plantx.co.jp/software/
このソフトウェアは植物育成装置側のセンサーやカメラなどのハードウェアを一元管理し、センシングによって得られた信号や情報(電流電位・植物の状態・CO2量・肥料量・水量・湿度・光合成速度・蒸散速度...etc)といった育成に重要になる20項目の細かなインプット量を、独自の定量的な理論に基づくノード階層構造を構築した数式チェーンによって紐付けし、リアルタイムで予測される植物成長のようなアウトプット量に関連付けておこなうことのできる先進的な機能を提供しています。
加速する国産植物育成装置産業
昨年の12月始めには、プランテックス社が株式会社クボタを引受先とした第三者割り当て増資による資金調達を実施したという発表がありました。この調達資金は、新方式の植物工場(マザー工場)の建設資金として主に活用されるようで、このマザー工場を基盤に、さらなるプランテックス社の植物生産装置の研究開発が活性化されることが期待されています。また農業メーカー国内大手のクボタ社との業務連携が今後更に強化されることで、プランテックス社の市場へのプレゼンスが高まり、植物育成装置産業というまだ新しい分野がこれから飛躍的に伸びてくるかも知れませんので、投資家からの目線でも楽しみな話題です。関連の話題
農業機械大手のクボタから資金調達し、大規模マザー工場を建設 | プランテックス プレースリリース新方式植物工場のプランテックスが農業機械大手クボタから資金調達、大規模マザー工場を建設