[AI技術x海外] AIによる雑草の識別機能による除草作業の無人化・効率化の取り組み


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2020/10/06

近年の農業で用いられる除草剤の使用量は世界規模で見ても増加しており、生態系や自然環境へ与える影響が深刻化しております。農薬も適切な量をより効率的に必要な箇所に対して必要なだけ使えば、このような環境負荷を最低限に抑えることもできますが、人間の手に依る最適化はとてもハードルが高いようです。

今回はAIを利用した最新の海外の除草技術が気になったので、その取り組みをアーカイブしようと思います。


実用化の例

現在大人口を抱える国々で行われている大規模農業では大量の除草剤を含む様々な農薬をとにかく大量に使用するため、それを消費する人体の健康への悪影響などもあります。さらに害虫を駆除することに留まらず、受粉や交配を担うミツバチなどのような益虫の数が近年激減していたり、除草成分に耐性をつけた雑草・害虫などの出現で更に強力な除草剤が利用されたりと、このような農薬の負の面が今や無視できないほどに農業分野に大きな影を落としています。

更に今後も人口増加傾向にある後進国などでは、環境に与える負の側面を知りつつもより生産量を増やすために除草剤に対する依存性もますます大きくなり、どうにか除草剤の大量使用に頼らない新しい生産手法の確立が急務となっています。

現代の農業技術やビジネスにおいて、人の手による労働を如何に農作業から取り除いていくかが大きな課題になっており、生産量を向上しながらも様々なコストを削減していくことが求められてます。

そういう観点から言えば、ロボットによる完全自動化農業とは人の手を取り除いた究極系の農業と言えますが、まだまだそのレベルとは程遠いのが現状です。

既存の農業からの脱却は依然として難しく、また革新的に新しい技術に投資するにしても、その投資に見合ったリターンがとても少ないという現実もまた新しいスキームが生まれにくいような足かせとなっています。

ですが環境問題や食料問題・人口問題などの様々な課題に直面している中で、長期的な視点で考えた時、やはりロボットによるオートメーション技術が近い将来人の手に取って代わらなければならないように思います。

現在はそんな農業の完全オートメーション化の長い過渡期にあり、様々な農作業において人の手からロボットにどう置き換えできるのか模索が続いている最中です。

最新の除草自動化技術

海外では既に脱農薬大量消費に向けた取り組みとして、AIとロボットによる野心的なビジネスに挑んでいるスタートアップ企業が存在しています。

スイス・ecoRobotix社では、AIによる雑草検出技術をいち早くロボットに取り入れ、ピンポイントで除草剤の散布を最適化させる製品をいち早く導入しています。

動画出典: AVO / Autonomous weeding robot / Presentation film,
https://youtu.be/5vvQqqc1zHM

日本で見られるように空からドローンで広域に散布するようなやり方ではなく、この無人機が自律的に判断しながら必要最低限のエネルギーで稼働し、しかもソーラーパネルで駆動しているため比較的長時間の作業にも対応できるようです。

この無人機に搭載されているAIは、除草剤散布に特化したものであり、生産植物と雑草を自動で判別しその雑草にだけピンポイントで除草剤を適量吹き付けることができます。そのため、土壌に対しての環境的なダメージを最小限に抑えるだけでなく、除草剤の使用量も90%削減したおかげで従来のやり方よりも3割ほどコスト削減できたということです。

別の類似の判例では
米カリフォルニアのBlue Reiver Technology社の製品も非常に興味深いです。こちらは半自律型の従来のトラクターの後ろに付けるアタッチメント商品ではありますが、大型のトラクターで牽引するタイプですので、一度に広い面積の雑草に対して除草剤をピンポイント噴霧することが可能のようです。

動画出典: Blue River Technology See & Spray - Blue River Technology's precision weed control machine,
https://youtu.be/XH-EFtTa6IU

作業員がトラクターでユニットを牽引する必要もあり完全な自立型では無いものの、AIによる雑草の自動判別機能と、除草剤使用量の最適化・抑制化を実現しています。


AIによる農業へのソリューションの拡大

近年の人工知能(AI)技術はロボット技術の発展とともに様々な応用の広がりを見せています。

特に画像から農作物を判断し対象の作業をおこわなせるという水準にまで達しており、質の高い学習を繰り返すことにより、そう遠くない将来、全ての農作業の過程で人間の介入がなくとも自律的に作業ができる時代が到来するかも知れません。

さらに言えば、実用以上の学習の深化が進み、これまで人間の感覚だけで培われてきた経験者が長年を経て体得できるような熟練の作業も、温度や湿度・土壌の様々なデータを数値化する技術と組み合わせることでAIにも同じような作業が再現できるようになれば、全く新しいフェーズの農業に変容する可能性もあります。

上の節でも現在のAIの実用的な判例を紹介したように、除草剤の使用量を劇的に減らしたり、他のも害虫・害獣の駆除や、肥料によらない本来の土壌の能力を最大限に活かした農作物の育成などにも一役買うことができます。このような単純作業は本来は農作業者になんら特別な技能や知識も必要とはしないものですが、いざ人の手で賄おうとするとそれなりの人員を配置し、まとまった労働時間を割いて作業に取り掛かる必要があったものです。高い知識と経験を持つ農業従事者が、このような単純な労働から解放されることで、より生産性の高い農業作業に集中できるようになる点も非常に大きいメリットと言えます。

詰まるところ、全ての農作業をAIとロボットに委ねる、人の手を取り除く、といった観点を持ちながら次世代の農業のあり方を模索していくことがこれからの農業従事者には必要であると言えそうです。

これからの農産業の主幹は、間違いなくAI技術主導によるロボットのオートメーション化にシフトしていく流れが、先進国だけなく他の経済成長著しい新興国でも活発化していくと予想されています。地球規模の気象変化によって降雨量や日照時間が変化し、これまで育てられていた作物に育成には適さない条件なってしまうようなことが世界中で起きてきた場合、食物の輸入に依存していた国では甚大な食糧危機に陥る可能性もありえるかも知れません。従来型の農業から、より環境への負荷の少ない未来型の農業への転換がグローバルに求められていると思います。

参照サイト

What robotic solutions currently exist for agriculture?(海外サイト)

記事を書いた人

記事の担当:taconocat

ナンデモ系エンジニア

個人レベルで可能なハイテクx農業を日々模索しています。 時折スマート農業界隈の気になったニュースなどもゆるく情報発信する感じです。